システム導入の効果とは?効果が感じられない理由と効果を高める方法

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監修:神保 和匡

FileMakerエンジニア

システム導入の効果とは?効果が感じられない理由と効果を高める方法

業務改善にはシステム導入が効果的だと言われていますが、「本当に効果が出るのか?」「導入して終わりにならないか?」と不安を感じる企業も少なくありません。

現場の実情は一様ではなく、業務フローや運用体制、人材リソースなどの違いにより、期待どおりの成果が出ないこともあります。

しかし、課題に正しく向き合い、適切なプロセスで導入・運用すれば、業務の効率化やコスト削減、品質向上など、さまざまな成果を生み出すことが可能です。

システム導入による代表的な効果
  • 手作業や紙業務の削減による業務効率化
  • 在庫や進捗の「見える化」による判断の迅速化
  • 情報の一元管理による属人化リスクの低減
  • 顧客満足度の向上と売上拡大

本記事では、実際の導入事例をもとに、どのように効果を得たのか、どのような工夫や改善を行ったのかを詳しく解説します。

この記事で分かること
  • システム導入によって得られる具体的な効果
  • 実際に業務改善に成功した企業の導入事例
  • システム導入効果を最大化するためのポイント
  • 導入前に把握しておくべき注意点と対処法

効果的なシステム導入にするためのヒントにしてください。

目次

1. システム導入の効果に関するよくある疑問

DX化における主な課題

業務効率化や生産性向上を目的に、さまざまな企業がシステム導入を検討しています。

しかし、導入にあたっては「本当に効果があるのか?」という疑問がつきまとうものです。

とくに中小企業や、これまでアナログ業務が中心だった現場では、システム導入に対する不安や誤解が根強く残っています。

システム導入の効果に関するよくある疑問
  • システム導入に本当に効果はあるのか
  • アナログな業務にも効果があるのか
  • 社内にITスキルがなくても使いこなせるのか

ここでは、現場からよく聞かれる代表的な疑問を取り上げ、その背景と考えるべき視点を整理していきます。

1.1. システム導入に本当に効果はあるのか

最も多い疑問は、「そもそもシステム導入に効果はあるのか?」という根本的なものです。

業務改善の必要性を感じつつも、「現場は忙しくなるばかり」「結局使いこなせずに終わるのでは?」といったネガティブな先入観が強く、導入そのものに懐疑的な声が出ることがあります。

確かに、システムを入れただけでは効果が出ないのは事実です。

重要なのは、何を目的に、どの業務をどう改善するために導入するのかを明確にし、その目的に合ったシステムを選定・運用できるかどうかです。

「情報の属人化をなくす」「紙の帳票をなくしてデータ活用を可能にする」といった明確な課題を設定し、それに対する解決手段として導入すれば、システムは非常に高い効果を発揮します。

つまり、「効果があるかどうか」はシステムそのものの性能以上に、導入の進め方と使い方に左右されるという点がポイントになるのです。

1.2. アナログな業務にも効果があるのか

デジタル化が進む現代においても、「うちは紙とExcelで十分だから」「業務が単純なのでシステム化は必要ない」といった声は残っています。

こうしたケースには、現状の方法が「慣れていて楽」という心理が働いていることが多く、変化そのものへの抵抗感が背景にあります。

しかし、実際にはアナログ業務の中にもシステム導入で大きく改善できるポイントが潜んでいます。

たとえば、手書きの日報やFAXでの受発注、目視による在庫確認などは、属人化しやすく、情報の正確性やスピードにも限界があります。

こうした業務をシステム化すれば、リアルタイムな情報共有や履歴の管理が可能となり、ヒューマンエラーの削減や業務負荷の軽減が可能です。

アナログな業務ほど、システム化による改善余地が大きいと捉えるべきと言えるでしょう。

1.3. 社内にITスキルがなくても使いこなせるのか

社内にITに詳しい社員がいなかったり、ITに不安を感じている社員が多かったりする事情も、導入のブレーキになりがちです。

特に現場主導で運用が必要となる場合、操作の習得やトラブル対応ができるかどうかが大きな課題になります。

このような懸念に対しては、導入時の設計段階で「誰でも直感的に使えるUI・操作性があるか」をしっかり確認することが重要です。

近年はクラウド型のサービスやローコード開発ツールの普及により、従来よりも圧倒的に使いやすさが進化しています。

マニュアルやトレーニング動画、サポートチャットといった支援体制を整えれば、ITスキルが高くない人でも十分に対応可能です。

社内にITスキルがないから無理だと決めつけるのではなく、ITスキルがない前提で導入体制を整えることがポイントです。

2. システム導入がもたらす効果

社内業務の効率化にシステムを導入するメリット

システム導入によって、企業はどのような具体的効果を得られるのでしょうか。

ここでは、実際に多くの企業が実感している5つの代表的な効果について解説します。

社内システムが使いにくい3つの原因
  • 業務効率化による時間削減
  • ヒューマンエラーの削減と標準化
  • リアルタイムな情報共有と意思決定の迅速化
  • 属人化からの脱却と引き継ぎ工数の削減
  • データ活用による業務改善サイクルの強化

いずれも、業務改善や経営判断のスピード向上に直結する重要なポイントです。

2.1. 業務効率化による時間削減

システム導入の最大のメリットのひとつは、作業時間の大幅な短縮です。

アナログで行っていた手間のかかる作業が自動化されることで、日常業務にかかる時間を削減し、より重要な業務に集中できるようになります。

具体例

日報を手書きで記入し、管理者が毎日手作業で集計していた業務が、クラウド型の入力フォームと自動集計機能を使うことで、1日あたり30分以上の作業削減に成功した。

効果
  • 書類の作成やデータ集計が自動化される
  • 情報確認のためのやりとりが不要になる
  • リアルタイムでデータが反映される

システム導入は単なる手間の削減にとどまらず、より本質的な業務に時間を割ける環境が整う点に大きな価値があります。

2.2. ヒューマンエラーの削減と標準化

人手によるミスを防ぎ、作業の品質を一定に保つ体制が整います。

入力ミスや確認漏れなどのヒューマンエラーが減り、誰がやっても同じ成果が出せる仕組みを実現できます。

具体例

在庫数を手書きで記録していた倉庫でバーコードスキャンと自動更新システムを導入したところ、棚卸ミスが大幅に削減された。

効果
  • 転記ミスや記入漏れなどの人為的ミスを防げる
  • 入力形式や処理手順の標準化が可能になる
  • 誰が作業しても同じ品質で業務が進められる

ヒューマンエラーの削減と業務標準化により、業務の品質と信頼性が安定し、組織全体のパフォーマンス向上にも貢献します。

2.3. リアルタイムな情報共有と意思決定の迅速化

情報の見える化と即時共有が進むことで、意思決定のスピードが大きく向上します。

特に拠点が複数ある企業や、在宅勤務を導入している組織にとっては大きなメリットです。

具体例

営業チームが案件情報を即時に入力し、マネージャーがリアルタイムで進捗状況を把握できるようになったことで、報告や会議の手間が削減されて現場対応がスピードアップした。

効果
  • 情報の更新/共有がリアルタイムで行える
  • 拠点や部門をまたいだ情報連携がスムーズになる
  • 迅速な意思決定と指示が可能になる

システムによって情報の流れが加速し、経営・マネジメント層の判断スピードが大幅に向上します。

2.4. 属人化からの脱却と引き継ぎ工数の削減

特定の人しか業務内容を把握していない「属人化」を解消できます。

引き継ぎの手間を減らし、担当者の急な変更にも柔軟に対応できる組織体制をつくれます。

具体例

案件対応の履歴や作業手順をシステム上で一元管理した結果、新任担当者でも短期間で業務を引き継げるようになり、ミスや手戻りが減少した。

効果
  • 業務プロセスの見える化が実現する
  • 対応履歴やノウハウが記録として残る
  • 引き継ぎや人材育成の負担を軽減できる

誰が担当しても業務が回る体制が整い、組織としての安定性と柔軟性が高まります。

2.5. データ活用による業務改善サイクルの強化

蓄積された業務データを分析することで、継続的な改善が可能になります。

何が効果的で、どこに改善余地があるかを可視化し、PDCAサイクルを実効性のあるものにできます。

具体例

作業日報をシステム化し、作業時間のログを分析した結果、特定業務に工数が偏っていたことが判明し、業務再配置によって生産性が向上した。

効果
  • 業務データを可視化して分析できる
  • ボトルネックの発見と改善がしやすくなる
  • PDCAサイクルを実行可能な仕組みとして回せる

データに基づいた業務改善が可能になり、継続的な効率化と最適化のサイクルが組織内で根付きます。

3. 実際に効果を感じたシステム導入の例

実際に効果を感じたシステム導入の例

システム導入は、理論的には効果があるとされていても、「本当に成果につながるのか?」という疑問を多くの企業が抱えています。

ここでは、実際にシステム導入によって具体的な成果を上げた企業の事例を紹介します。

単なる業務改善だけでなく、生産性や顧客満足度、コスト削減といった多角的な効果に注目し、それぞれの導入背景と結果を詳しく解説します。

実際に効果を感じたシステム導入の例
  • 手書き日報からの脱却による業務削減
  • 在庫管理システムで廃棄ロスを削減
  • 工程管理システムで工程遅延が改善
  • CRM導入によるリピート率向上

それぞれの事例から、導入効果を生み出すヒントをつかんでください。

3.1. 手書き日報からの脱却による業務削減

現場の作業報告を紙で行っている企業は少なくありませんが、手書き日報は記録ミスや集計工数の負担が大きくなりがちです。

ここでは、クラウド日報システムの導入で業務を効率化した事例を紹介します。

システム導入前の課題

ある製造業では、これまで現場で作業員が紙の日報を手書きし、それを事務担当が集計・入力するというフローが定着していました。

紙の運用により、誤字脱字や記入漏れが頻発し、データの整合性を取るのに余計な手間がかかっていました。集計作業には1日1時間以上の工数が発生し、残業の原因にもなっていました。

システム導入による効果

タブレット端末とクラウド日報システムを導入。

作業が終わった時点でその場で入力・送信できる仕組みに切り替えました。

これにより、記録の正確性が大幅に向上し、リアルタイムでの情報共有が可能に。

集計作業も自動化され、1日あたり30分〜1時間の業務時間削減を実現しました。

さらに、上司が即時に内容を確認できるようになったことで、現場へのフィードバックや業務改善の指示もスピードアップ。

情報の流れがスムーズになり、業務全体のリズム改善にもつながりました。

紙運用からの脱却は、業務効率だけでなくコミュニケーションの質も高める有効な手段です。

特に、日次業務の改善には即効性のある成果が期待できます。

3.2. 在庫管理システムで廃棄ロスを削減

在庫管理は、店舗経営のコストと直結する重要業務です。

ここでは、クラウド在庫管理システムの導入で廃棄ロスを削減した小売業の取り組みを紹介します。

システム導入前の課題

全国に複数の小売店舗を展開する企業では、店舗ごとに在庫をExcelで管理し、発注も各自の判断に任せていたため、発注ミスや過剰在庫が発生しやすい状態でした。

特に生鮮品などの消費期限が短い商品では、日々の廃棄ロスが大きな課題になっていました。

システム導入による効果

全店舗の在庫を一元管理できるクラウド在庫システムを導入。

発注や在庫数、売上推移をリアルタイムで把握できるようにした結果、廃棄ロスは導入前と比較して20%以上削減。

さらに、発注の基準が明確化されたことで、担当者ごとの判断ブレも解消し、店舗間での在庫移動なども効率的に行えるようになりました。

コスト削減だけでなく、現場の負担軽減と業務の見える化にも大きく貢献しています。

属人的な判断に頼らない在庫管理は、無駄なコストの削減だけでなく、組織全体の安定運用に直結します。

3.3. 工程管理システムで工程遅延が改善

複数の現場を管理する業種では、工程進捗の「見える化」が遅れによる損失を防ぐ鍵となります。

ここでは、工程管理システムを用いた遅延改善の成功事例を紹介します。

システム導入前の課題

建設業の現場では、現場ごとに工程管理を手作業で行っており、共有がFAXや電話、ホワイトボードに頼っていたため、作業の進捗がタイムリーに把握できないという問題を抱えていました。

特に複数現場をまたぐ管理者は、情報確認のために移動や電話対応に追われ、判断や指示の遅れが工程全体に影響を与えていました。

システム導入による効果

スマホやPCから入力・確認が可能な工程管理システムを導入。

各作業工程の進捗や変更内容がリアルタイムに共有されることで、工程遅延の頻度が60%以上減少しました。

報告業務の効率化によって、管理職の業務負荷が軽減されました。

さらに、納期の信頼性が大きく向上したことで、顧客満足度も改善しています。

現場ごとの進捗をリアルタイムで把握できる仕組みは、組織の判断スピードと全体最適化を加速させます。

3.4. CRM導入によるリピート率向上

顧客との関係構築が売上に直結するBtoC業態においては、CRMの導入が継続的な成果に大きく貢献します。

ここではリピート率を向上させた成功事例を見ていきましょう。

システム導入前の課題

BtoC型のサービス業では、リピート顧客の確保が売上安定のカギになりますが、従来は顧客管理が属人化しており、対応履歴や好みなどの情報が個々のスタッフに依存していました。

そのため、対応のばらつきやフォロー漏れが発生し、再訪問につながらないという課題がありました。

システム導入による効果

顧客の属性・履歴・対応内容を一元管理できるCRM(顧客管理システム)を導入。

誕生日や前回購入商品などに基づいたパーソナライズドなフォローが可能になり、スタッフ間での情報共有もスムーズになりました。

その結果、半年後にはリピート率が前年比で15%向上。

さらに、クーポン配信やキャンペーン管理も自動化され、マーケティング施策の運用効率も高まりました。

属人化を解消し、顧客との接点を可視化することで、リピート促進や売上拡大につながる好循環が生まれます。

4. システム導入の効果が感じられない要因

中小企業が取り組むべき業務効率化の施策

せっかく高機能なシステムを導入しても、期待した効果が得られないケースは少なくありません。

その背景には、導入の進め方や現場とのギャップ、体制の不備など、複数の要因が複雑に絡み合っています。

システム導入の効果が感じられない要因
  • 要件定義が曖昧で導入後のズレが発生した
  • 現場とのコミュニケーション不足で運用が形骸化した
  • 研修や教育が不十分なまま運用が始まった
  • システム導入後の改善が不足していた

ここでは、導入効果を阻害する代表的な要因について整理し、何がボトルネックになるのかを明らかにしていきます。

4.1. 要件定義が曖昧で導入後のズレが発生した

システムは、設計通りに動作するものです。

つまり、要件定義が曖昧なままだと、実際の業務フローと合わない仕様で進行し、導入後に多くの手戻りや混乱が発生します。

失敗につながる要因
  • ヒアリング不足により、現場の実情を正確に反映できなかった
  • 課題の優先順位が整理されず、対応範囲が中途半端になった
  • 部署ごとにバラバラの要望が出され、全体最適にならなかった
起こり得ること
  • 「想定と違う」「使いにくい」と現場から不満が出る
  • 修正対応にコストと時間がかかり、導入効果を実感できない

4.2. 現場とのコミュニケーション不足で運用が形骸化した

いくら高度なシステムでも、実際に使う現場の理解と納得がなければ定着しません。

現場の協力を得られないまま導入してしまうと、形式的に運用されるだけで、活用が進まなくなります。

失敗につながる要因
  • システム導入の「背景」や「目的」が十分に説明されていない
  • 導入後の業務変化について現場とすり合わせがなされていない
  • 実際の運用で困ったときの相談先や改善ルートが用意されていない
起こり得ること
  • 現場で「やらされ感」が広がり、入力ミスや非協力が増える
  • 従来の業務手順に戻る動きが強くなり、活用が止まってしまう

4.3. 研修や教育が不十分なまま運用が始まった

せっかく導入しても、操作方法や運用ルールが現場に浸透していなければ、システムは「使いこなされないツール」として放置されてしまいます。

失敗につながる要因
  • マニュアルや研修がシステム会社任せになっている
  • 業務に合わせた具体的な操作例がなく、応用が利かない
  • 一部社員だけが理解していて、属人化が再発する
起こり得ること
  • 操作ミスが頻発し、かえって業務効率が低下する
  • ITリテラシーの低い層が取り残され、社内格差が拡大する

4.4 . システム導入後の改善が不足していた

システム導入はスタートであり、ゴールではありません。

導入後の運用データを分析し、改善を繰り返すことで、はじめて効果が積み上がっていきます。

ポイント
  • 効果測定をせず、「何がよくなったか」が見えない
  • 現場の声を集める機会がなく、課題が放置される
  • 改善を担う担当者が不在、あるいはリソースが確保されていない
起こり得ること
  • 当初の目的が曖昧になり、現場の関心も薄れていく
  • 「結局意味がなかった」という印象だけが残る

 システム導入の効果が感じられない要因は、ツールの選定ミスではなく「導入プロセス」と「現場との関わり方」に起因するケースが大半です。

要件定義・コミュニケーション・教育・改善などのフェーズで現場の関わりが不足すると、導入効果は半減してしまいます。

効果的な導入を実現するには、単なるシステムの導入ではなく、現場に活かされる運用の仕組みとして定着させていく視点が欠かせません。

5. システム導入効果が出やすい業務

システム導入効果が出やすい業務

システム導入はすべての業務に等しく効果を発揮するわけではありません。

業務の特性によっては、導入の効果が出やすいケースと、出にくいケースが存在します。

システム導入効果が出やすい業務
  • ルーチン化されている定型業務
  • 情報共有業務
  • 計測可能な作業

ここからは、特にシステム導入の効果が高く表れやすい業務の特徴と具体例を解説します。

5.1. ルーチン化されている定型業務

日々繰り返し行われる定型業務は、システム導入による自動化や省力化の恩恵を最も受けやすい分野です。

ルーチン化されている定型業務の例
  • 請求書の発行
  • 経費精算
  • 勤怠集計
  • 棚卸表の作成

手順が決まっていて、人的な判断をあまり必要としない業務の場合は、RPA(業務自動化)や定型フォームを備えた業務支援ツールを導入することで、作業時間を大幅に削減し、ミスも最小限に抑えることができます。

繰り返し作業こそ、人手よりもシステムが得意とする領域です。

5.2. 情報共有業務

複数の部署や担当者間での情報共有を必要とする業務も、システム化によって効果を発揮します。

情報共有業務の例
  • 営業報告
  • 進捗状況の共有
  • 問い合わせ対応履歴の記録

情報がリアルタイムで共有されれば、確認漏れや伝達ミスを防止できます。

また、共有されたデータを蓄積し分析することで、改善につながる示唆も得られやすくなります。

5.3. 計測可能な作業

業務の内容や成果が数値で把握できる業務も、システム導入の効果が見えやすくなります。

計測可能な作業の例
  • 作業時間
  • 作業件数
  • 在庫数ミス発生率

定量的に測定できる業務は導入前後の変化を明確に評価できるため、ROI(投資対効果)の測定も容易です。

データが可視化されることで、「どの工程で時間がかかっているのか」「どの作業に人員を割きすぎているか」などのボトルネックを特定しやすくなり、継続的な業務改善にもつながります。

6. システム導入の効果を定量化して判断する方法

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システム導入の目的は業務改善や生産性向上にありますが、「導入して本当に効果があったのか」を正しく評価できていない企業は少なくありません。

効果が曖昧なままでは、次の改善や追加投資の判断も困難になります。

そこで重要となるのが、導入効果を定量的・定性的な観点から評価する仕組みの構築です。

システム導入の効果を定量化して判断する方法
  • ROI(投資対効果)の算出
  • 定量指標
  • 定性指標

ここからは、代表的な判断指標とその活用方法について解説します。

6.1. ROI(投資対効果)の算出

ROI(投資収益率)は、システム導入にかけたコストと、導入によって得られた成果のバランスを数値化する代表的な指標です。

ROI(投資対効果)算出の計算

ROI(%)=(導入による効果金額 - 投資コスト)÷ 投資コスト × 100

たとえば、システム導入によって年間1,200時間の業務削減が実現し、1時間あたりの人件費が3,000円だった場合、その効果金額は360万円です。

導入コストが300万円であれば、ROIは20%となります。

ROIを算出する際は、「効果をどう数値化するか」が鍵です。

業務時間の削減、ミス削減によるロス防止、売上向上、顧客単価の改善など、業務に直結する指標をもとに検証する要があります。

6.2. 定量指標

ROI以外にも、導入効果を測定するための定量的な指標はいくつかあります。

よく使われる定量指標の例
  • 業務時間の削減(例:1件あたりの処理時間、月間作業時間の変化)
  • 処理件数の増加(例:1人あたりの処理可能件数)
  • 人件費や外注費の削減
  • 顧客対応スピードの短縮(問い合わせ対応時間など)
  • ミスやトラブルの件数減少
  • ペーパーレス化による印刷・郵送コスト削減

こうした指標は、導入前後の定点観測を通じて効果を把握するのが基本です。

できる限りシステム導入前にベースラインとなる数値を記録しておくことで、効果の可視化が容易になります。

6.3. 定性指標

システム導入の効果は、数値で表現できるものだけではありません。

現場の業務感覚や従業員の満足度、顧客対応の質といった「定性的な変化」も見逃せない重要な要素です。

定性指標として確認される項目
  • 従業員の業務ストレスの軽減
  • 部門間のコミュニケーション改善
  • 業務引き継ぎのしやすさ向上
  • 顧客からのポジティブなフィードバック増加
  • 自主的な改善提案の増加
  • 残業の減少によるワークライフバランスの改善

定性指標を収集するには、アンケート調査、面談、ワークショップなどの手法が有効です。

特にITに慣れていない現場の声を丁寧に拾うことで、単なる数値だけでは見えにくい導入効果を把握できます。

7. システム導入の効果を高めるためポイント

システム導入の成否を分けるのは、ツールそのものの性能だけではありません。

むしろ、導入の「進め方」や「現場との関わり方」、「運用後の体制」が効果に大きく影響します。

システム導入の効果を高めるためポイント
  • 目的を明確にして社内全体で共有する
  • 要件定義段階で現場の声を拾う
  • 業務フローの見直しとセットで導入する
  • 段階的に導入してスモールスタートで回す
  • 社内にエキスパートを配置する
  • 効果測定とPDCAを回す仕組みをつくる
  • 信頼できるシステム開発会社を選定する

ここでは、システム導入による成果を最大限引き出すために、企業が意識すべき実践ポイントを紹介します。

7.1. 目的を明確にして社内全体で共有する

システム導入は手段であって目的ではありません。

「なぜこのシステムを導入するのか」「どのような課題を解決したいのか」といった目的を最初に明確にし、関係者全員で共有することが非常に重要です。

目的が曖昧なまま導入を進めると、現場の納得感が得られず、結果として活用されないまま終わってしまうケースもあります。

また、部署間で目的認識にズレがあると、要件定義や運用フローに食い違いが生じ、スムーズな定着を妨げます。

プロジェクト初期の段階で、「導入の背景」「達成したいゴール」「評価指標」を全社的に共有しておくことが、成功への第一歩です。

チェックポイント
ここがポイント
  • システム導入の「目的」を最初に明確化
  • 部署間での認識のズレを解消しておく
  • 背景/ゴール/指標を全社的に共有

7.2. 要件定義段階で現場の声を拾う

システム導入が現場で活用されるためには、実際に使う人の課題や業務フローを正しく反映した設計が不可欠です。

そのため、要件定義段階では、経営層や情報システム部門だけでなく、現場担当者からのヒアリングを丁寧に行うことが重要です。

現場の実情を知らずに設計されたシステムは、操作性が悪かったり、肝心の業務課題を解決できなかったりするため、定着せず形骸化してしまいます。

ユーザ視点での要件整理を徹底し、納得感を持って使ってもらえるシステムを目指しましょう。

チェックポイント
ここがポイント
  • 実際に使う現場の声を徹底的にヒアリング
  • 操作性と現場課題の解決を両立する設計
  • 要件定義に現場担当を巻き込む体制を構築

7.3. 業務フローの見直しとセットで導入する

システム導入は現行業務の課題を解消するための機会でもあります。

ただ既存の業務をそのままシステムに置き換えるのではなく、業務フロー自体を見直すことで、より大きな効果が期待できます。

たとえば、非効率な手順や属人化していた作業を見直し、システムを前提とした新しい運用ルールに再設計することで、業務の無駄を大幅に削減できます。

業務改善とシステム導入はセットで考えるべきであり、両者を切り離して進めるべきではありません。

チェックポイント
ここがポイント
  • 現行業務の「そのまま移行」を避ける
  • 非効率/属人化を見直すチャンスと捉える
  • 新しい業務ルールと併せて導入する

7.4. 段階的に導入してスモールスタートで回す

いきなり全社導入を目指すのではなく、まずは一部の部署や業務に限定した「スモールスタート」で始めることが成功の鍵です。

段階的な導入であれば、現場の反応や課題を早期に確認でき、必要に応じて機能の調整や教育の強化が可能です。

実績と信頼を積み重ねながら徐々に範囲を広げることで、現場からの抵抗も少なくなり、導入効果も高まりやすくなります。

導入規模に応じてリスクを最小化しつつ、確実に成果を出す戦略が求められます。

チェックポイント
ここがポイント
  • 全社一斉導入ではなく段階的導入が基本
  • 小さな成功体験を積んでから拡大
  • リスクと負荷を最小限に抑えられる

7.5. 社内にエキスパートを配置する

導入したシステムを継続的に活用し、改善を進めるためには、社内にシステムに詳しいエキスパートを配置することが欠かせません。

単なる操作説明だけでなく、現場からのフィードバックを吸い上げ、運用改善に活かせる「橋渡し役」がいることで、システムが形骸化せずに生きたツールとして機能します。

エキスパートは情報システム部門だけに限定する必要はなく、各部署に担当者を立てて分散配置する方法も有効です。

継続的な改善活動を社内で自走できる体制を構築しましょう。

チェックポイント
ここがポイント
  • 社内にシステムの「橋渡し役」を確保
  • 操作説明+改善提案の両面で活躍
  • 各部署に担当者を分散配置するのも有効

7.6. 効果測定とPDCAを回す仕組みをつくる

システム導入は、導入して終わりではありません。

導入後に定期的な効果測定を行い、目標に対してどれだけ成果が出ているかを確認し、必要に応じて改善策を講じるPDCAサイクルを確立することが重要です。

効果測定には、業務時間の削減、ミスの減少、売上向上などの定量的指標に加え、現場の使いやすさや顧客満足度といった定性評価も含めると、より実態に即した判断が可能になります。

継続的なモニタリングを行い、改善に取り組む文化を育てましょう。

チェックポイント
ここがポイント
  • 効果測定+PDCAで導入後も継続改善
  • 定量+定性指標で実態に即した評価
  • 改善文化の醸成がシステム成功のカギ

7.7. 信頼できるシステム開発会社を選定する

最後に欠かせないのが、導入パートナーの選定です。

どんなに良い構想や目的を持っていても、開発・導入を任せる会社との相性や技術力によって、結果は大きく左右されます。

選定時には、業界知識、過去の実績、提案力、サポート体制、導入後のフォローアップ体制などを総合的に比較し、自社にとって最適なパートナーを選びましょう。

また、単にシステムをつくるだけでなく、業務改善まで伴走してくれる姿勢のある会社を選ぶことが、長期的な成功につながります。

チェックポイント
ここがポイント
  • 導入パートナーは実績/相性/支援体制で判断
  • 「システム導入+業務改善」まで支援する会社を選ぶ
  • 単なる開発業者でなく、伴走型の支援企業を重視

8. 効果を感じるシステム導入を目指すなら「ブリエ」

UIデザインに強いシステム開発会社をお探しなら「ブリエ」

システム導の効果は、業務フローへの適合性や現場の納得感、継続的な改善体制など、導入プロセス全体の質によって大きく左右されます。

「ブリエ」は、業務の実態を丁寧に把握し、現場に根づくシステム設計と運用支援を提供します。

導入後も継続して寄り添い、改善をサポートする伴走型の開発体制が強みです。

株式会社ブリエの強み
  • 現場ヒアリングを重視し、業務フローに即したシステム設計を実施
  • スモールスタートから全社展開まで、フェーズに応じた柔軟な提案
  • クラウド/タブレット対応など、運用しやすさに配慮したUI・UX設計
  • 導入後も課題解決型のサポート体制で改善を継続
  • 製造業、小売業、建設業など幅広い業種での導入実績

業務にフィットした活きたシステムを導入し、効果を実感したい企業様は、ぜひ「ブリエ」にご相談ください。

9. まとめ

◆ システム導入は業務改善の有効な手段
  • 紙やExcel中心の運用から脱却することで、入力ミスや集計ミスを削減
  • リアルタイムで情報を共有でき、状況把握と意思決定のスピードが向上
  • 集計や報告業務の自動化により、残業削減や作業負担の軽減が可能
  • 数値や傾向を可視化できるようになり、マネジメントの質も向上
  • 部門横断での情報共有により、組織全体の連携がスムーズになる

◆ 成果を出すには現場に即した導入が重要
  • システムの目的を明確にし、関係者全員で共有することが前提
  • 実際の業務フローに沿って設計・運用されなければ、形骸化のリスクが高まる
  • 現場担当者からの意見を反映することで、納得感のある仕組みになる
  • 導入と同時に、既存の業務フローの見直しも必要である
  • 属人化していた作業を標準化する機会にもなる

◆ 継続的な運用と改善が成功のカギ
  • 導入して終わりではなく、定期的な効果測定と改善が不可欠
  • 定量(時間短縮・ミス減少)と定性(満足度・使いやすさ)の両面で評価する
  • 小さな改善を繰り返すことで、システムが現場に根づいていく
  • 現場にフィードバックを促す仕組みをつくると、改善のサイクルが回る
  • 教育体制や社内サポート体制の整備も重要な運用要素になる

◆ 社内に推進者を配置して定着しやすく
  • システムの操作や活用をリードできる人材を配置する
  • 部門ごとにエキスパートを置くことで、社内展開を加速させる
  • 社内での相談窓口があることで、現場の不安や課題を早期に解消できる
  • 改善提案を吸い上げる体制があれば、より柔軟に改善が可能になる

◆ パートナー選びがシステム導入成功のカギ
  • 自社の業務を理解してくれるベンダーを選ぶ
  • 導入後のサポートや運用支援まで伴走してくれる企業が選ぶ
  • 過去の実績、業界知識、提案力を含めて総合的に比較する
  • 「つくるだけ」でなく「活かすところまで」支援してくれる姿勢を重視する

システム導入はゴールではなく、業務改善のスタートラインです。

導入の背景や目的を明確にし、現場の声を反映しながら、継続的に改善を重ねていくことで、本当の効果が生まれます。

今回の事例を参考に、自社に合った導入と運用の戦略を描いていきましょう。

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監修:神保 和匡

株式会社ブリエ代表取締役。Webデザイン、WordPress、Elementor、DTPデザイン、カメラマンなどを経て、FileMakerエンジニアとなる。企業の経営課題であるDX化、業務効率化、ペーパーレス化、情報の一元管理など、ビジネスニーズの変化に合わせてFileMakerで業務システムを開発し、柔軟に拡張して解決いたします。

【全国対応】株式会社ブリエは、企業の経営課題であるDX化、業務効率化、ペーパーレス化、情報の一元管理など、ビジネスニーズの変化に合わせてFileMakerで業務システムを開発し、柔軟に拡張して解決します。あらゆる業種や規模の企業、非営利団体、学校に固有の課題を解決するカスタムAppをご提案します。

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