
FileMakerエンジニア

多くの企業で業務システムの導入が進んでいますが、画面設計の良し悪しがその成否を大きく左右します。
実際に、「せっかくシステムを導入したのに、現場から使いづらいという声が上がる」といった声は少なくありません。
システムの画面設計は見た目を整えるだけでは不十分です。
現場で実際に使われ、業務効率を高めるには、使いやすさや導線、操作性まで含めた設計が欠かせません。
- 見た目だけでなく使いやすさを重視する設計視点
- 現場の業務フローに即した画面構成
- 初心者でも迷わず使えるUI設計
- 一貫性のあるデザインで操作ミスを防止
- 情報の優先順位を明確にした視認性の高い配置
- ユーザの声を取り入れた継続的な改善
本記事では、「なぜ業務システムの画面設計が重要なのか?」という基本から、よくある誤解、設計時のポイント、改善のコツまで、現場で本当に役立つノウハウをわかりやすく解説します。
- 業務システムの画面設計が失敗する根本原因
- UI/UXに関するよくある誤解とその修正方法
- 業務フローと画面設計の関係性
- 実務に活かせる画面設計の重要ポイント
- 改善のための具体的なステップとツール活用術
- 継続的な改善につながるフィードバックの仕組み
業務効率化・定着率アップにつながる設計のヒントを、具体例を交えてお届けします。
目次
1. 業務システムにおける画面設計の役割

業務システムの画面設計には、単に「見やすさ」や「使いやすさ」といった視覚的な要素だけでなく、業務そのものの効率や品質に影響するさまざまな役割があります。
- 情報と業務の橋渡しをする
- 現場の動作を標準化・効率化する
- 人的ミスや教育コストを抑える役割
- システムの定着率を高める
ここからは、画面設計が果たす主な役割について解説します。
1.1 情報と業務の橋渡しをする
業務システムの画面は、データとユーザの間をつなぐ「橋渡し役」です。
日々の業務で扱う情報量は膨大ですが、それをいかに見やすく、必要なときにすぐ取り出せるようにするかが画面設計の要と言えるでしょう。
たとえば、在庫管理の場合は、商品名、在庫数、ロケーション、入出庫履歴など、複数の情報を一画面に表示する必要があります。
その際、単にすべての情報を並べるのではなく、「今どの情報が求められているのか」を設計側が把握し、最適な表示順・構造にすることで、現場のスピード感を損なわずに業務を遂行できます。
このように、画面設計は単なるUIではなく、業務そのものの流れと密接に関わるものです。
使い勝手を高めることで、業務のスムーズさが大きく変わります。
1.2 現場の動作を標準化・効率化する
優れた画面設計は、現場作業を誰でも同じように進められる仕組みをつくります。
たとえば、ある作業フローで「A→B→C」と進むべき手順がある場合、その順序が自然と導かれるUIであれば、迷いなく操作できるでしょう。
ボタンの配置、色の使い方、次に何をするかを示すヒントなど、視覚的なガイドによって手順が統一されれば、新人でもベテランでも同じ質で業務が遂行され、属人化を防げます。
結果として業務効率が向上し、チェックの手間も減るため、ミスのリスクも低減されます。
また、標準化された動作が積み重なることで、全体の業務プロセスが可視化・改善しやすくなるという副次的なメリットもあります。
1.3 人的ミスや教育コストを抑える役割
業務システムに慣れていない社員でも安心して使える画面設計は、人的ミスの削減に大きく貢献します。
たとえば、入力欄に制限を設ける、フォーマットを固定する、未入力時にアラートを出すといった仕組みは、小さな工夫ながら大きな効果が期待できるでしょう。
さらに、UI自体が「どうすればいいか」を導いてくれる構造であれば、マニュアルに頼る必要も減り、教育にかかる時間や労力を大幅に削減できます。
新入社員が初日に行う業務であっても、迷わず操作できるようなデザインは、組織にとっての生産性を底上げする鍵でもあります。
UIの品質は、単なるデザイン性ではなく、業務知識の移植性に直結しているのです。
1.4 システムの定着率を高める
せっかく開発・導入した業務システムも、ユーザにとって使いづらければ「使われないシステム」になってしまいます。
これは導入コストや時間を考えると、企業にとって大きな損失です。
一方で、ユーザにとって直感的に使いやすい、操作にストレスがない画面であれば、自然と業務に取り入れられ、使用率も高まります。
たとえば「ログイン直後に今日やるべきタスクが一目でわかる」「どの画面でも迷わず戻れる」「入力がサクサク進む」など、小さな快適さの積み重ねが、使いたくなるシステムを育てます。
業務システムの定着度は、現場の満足度・生産性に直結するため、画面設計の良し悪しは非常に重要な要素です。
2. 業務システムの画面設計を失敗する理由

画面設計が現場に受け入れられず、使いづらいと感じられてしまう背景には、いくつかの共通する失敗要因があります。
- 開発者目線で作られている
- 現場の業務フローとの乖離
- 情報の優先順位が考慮されていない
- 多機能=高機能と考えている
- フィードバックループがないままリリースされる
ここでは、業務システムにおいて画面設計がうまくいかない理由を見ていきます。
2.1 開発者目線で作られている
設計において最もありがちな失敗のひとつが、利用者ではなく作る側の論理を優先してしまうことです。
現場の使い勝手より、技術的に可能かどうかが判断基準になると、結果として「使いにくい」画面になってしまいます。
- 現場の業務フローや操作感を考慮せずに設計してしまう
- 開発のしやすさやシステム都合を優先し、UIの使い勝手が二の次になる
- 実際の使用シーンや端末環境を踏まえた検証が不足している
2.2 現場の業務フローとの乖離
業務システムは、現場のオペレーションを支援するためのツールです。
しかし、その設計が実際の業務手順や作業の流れとズレていると、かえって非効率や混乱を招くことになります。
- 現場担当者へのヒアリング不足により、実情と設計に乖離が生じる
- 実務では複雑なフローをシンプルに表現しすぎて逆にわかりにくくなる
- 必要な情報が分断され、複数画面を行き来する手間が増加する
2.3 情報の優先順位が考慮されていない
情報が多ければ便利、とは限りません。
ユーザが今何を判断すべきかを考慮し、必要な情報を目立たせる設計が重要です。
そうでなければ、かえって混乱を生む結果になります。
- 一覧画面で重要な項目が見つけにくい位置に配置されている
- 情報が平坦に並び、どこを見ればいいのかわからない
- 情報の分類や並べ方にルールがなく、視線の誘導がない
2.4 多機能=高機能と考えている
機能を詰め込めば詰め込むほど、使い勝手は下がります。
「あれもこれもできる」より「今やりたいことが迷わずできる」ことが、良い画面設計の条件です。
- 画面に多数のアイコンやボタンがあり、操作に迷う
- 利用頻度の低い機能が目立ち、主機能の邪魔になる
- 初めて触れるユーザが理解できず、問い合わせが増える
2.5 フィードバックループがないままリリースされる
完成したからといって終わりではありません。
運用フェーズにおいて現場の声を拾い上げ、継続的に改善していく体制がなければ、真に使いやすいシステムにはなりません。
- テストや試験運用を行わず、現場に一方的に導入される
- 利用者からの意見を反映する仕組みが用意されていない
- 問題があっても、改善されるまでに時間がかかり定着しない
画面設計の失敗は、見た目だけで判断されるものではなく、実際の業務やユーザ体験に深く関係しています。
開発者目線に偏らず、現場の声に耳を傾け、使いやすさと業務適合性を両立させることが、システム定着の鍵となります。
なお、使いやすい業務システムの画面設計については、専門家の意見を参考にすることもおすすめです。
3. 業務システムの画面設計にありがちな誤解

画面設計に関する基本的な認識がズレていると、せっかくのシステムも「使いづらい」ものになってしまいます。
- UIは「見た目」のことだと思っている
- シンプル=機能不足だと思っている
- ベテラン社員の使いやすさを優先する
- マニュアルでカバーすればいいと考えている
ここでは、特にありがちな誤解を取り上げ、設計の落とし穴を明らかにします。
3.1 UIは「見た目」のことだと思っている
UI(ユーザインターフェース)を「デザイン」や「色使い」だけと捉えているケースは少なくありません。
- UIは「操作のしやすさ」「意図が伝わる配置」を含む設計全体
- 色や装飾だけではなく、情報構造やナビゲーション設計が重要
- ユーザの思考の流れを導く役割を担う
UIは見た目だけでなく、ユーザの行動や判断をサポートする設計思想なのです。
3.2 シンプル=機能不足だと思っている
シンプルな画面を見ると「機能が少ないのでは?」と誤解されがちですが、整理された画面こそが業務スピードを支える力になります。
- 表示項目を絞ることで判断・操作が早くなる
- 初見ユーザーでも迷わず使える設計につながる
- 必要に応じて詳細情報を展開する段階表示させる
必要最低限の要素に絞ることで、業務効率が向上のスピードが加速することもあります。
3.3 ベテラン社員の使いやすさを優先する
システムはあらゆる職種・世代が使うものです。
ベテランに合わせた複雑な設計は、若手や異動者、パート社員などには大きなハードルになります。
- 特定の知識や経験を前提にしない設計が必要
- 初心者でもすぐに使えるUIが定着率を高める
- 全社的な業務標準化の観点でも、誰でも扱える設計が重要
新人や他部門も使う前提で設計しないと、全体最適が損なわれてしまいます。
3.4 マニュアルでカバーすればいいと考えている
「使いにくくても、説明書を読めばいい」という考えは現場では通用しません。
マニュアル不要で感覚的に使える設計こそが理想です。
- 操作に迷わないUIなら、教育・サポートコストも削減できる
- 頻繁に使う操作ほど、ナビゲーションの工夫が重要
- マニュアルは補足であり前提にしてはいけない
設計段階での使いやすさが最優先。
マニュアル依存の設計は非効率を生みます。
業務システムの画面設計では、「見た目」や「慣れ」に頼った判断が、結果的に現場の負担を増やす要因になります。
UIは単なる装飾ではなく、業務の流れやユーザの直感に寄り添う設計思想であるという視点が欠かせません。
シンプルであっても目的に合った設計、誰もが使いやすい構造、マニュアルに頼らない直感的な操作性が、業務の効率化と定着率を左右します。
誤解を払拭し、本質的な画面設計を目指しましょう。
4. 業務システムの画面設計における良いUI・悪いUIの例

画面設計が業務効率やユーザ満足度に大きく影響することは言うまでもありません。
ここでは、実際の業務シーンを想定した「良い画面設計」と「悪い画面設計」の例をそれぞれ紹介し、UI設計の成功・失敗要因を明らかにします。
4.1 良い画面設計の例
ユーザにとって使いやすく、業務の流れを妨げない設計とはどのようなものでしょうか。
- 操作ステップが少ない在庫管理画面
- 検索しやすい顧客管理画面
- スマホ対応で現場でも使いやすい業務アプリ
具体的な事例をいくつか紹介します。
4.1.1 操作ステップが少ない在庫管理画面
出庫・入庫の操作がわずか2クリックで完了し、在庫数もリアルタイムに確認できる設計です。
- 最小限の入力で処理が完結し、スピード感ある操作が可能
- 操作ミスを誘発しにくい、配置や色分けに配慮したボタン設計
- 一目で必要情報が把握できるよう、在庫状況をビジュアル表示
- 更新情報やエラーメッセージを即時に通知
4.1.2 検索しやすい顧客管理画面
顧客名や電話番号、メールアドレスなど多様な検索キーに対応し、検索結果も即座に表示される画面設計です。
- 入力補完機能付きでタイピングミスや表記揺れにも柔軟に対応
- 一覧表示のレイアウトが整っており、情報の比較がしやすい
- 顧客情報の詳細や履歴にもスムーズに遷移できる
- 検索後のアクション(編集・削除)にも直感的にアクセス可能
4.1.3 スマホ対応で現場でも使いやすい業務アプリ
倉庫や工場などの現場での使用を前提に設計された業務アプリです。
- モバイル端末に最適化されたボタンサイズと配置で誤操作を防止
- 表示項目を必要最小限に絞り、視認性と操作性を両立
- タップ操作に特化したUI設計で、片手操作でも使いやすい
- オフライン環境でも使用できるようデータキャッシュ対応
4.2 悪い画面設計の例
一方で、見た目や機能が充実しているように見えても、ユーザに混乱を招く「悪い画面設計」も存在します。
- 一画面に全て詰め込んだ受発注システム
- 不明瞭なラベルで混乱を招く経費精算画面
- 入力項目が頻繁に変わる勤怠管理システム
ここでは失敗例をいくつか紹介します
4.2.1 一画面に全て詰め込んだ受発注システム
大量のボタンや表が一画面に並び、何をどう操作すればいいかがわかりづらい設計です。
- 機能が多すぎて目的の操作にたどり着くまでに時間がかかる
- 情報が密集しすぎて視認性が著しく低下
- レイアウトに一貫性がなく、誤操作を招きやすい
- 初見ユーザにとって極めて直感性が低い
4.2.2 不明瞭なラベルで混乱を招く経費精算画面
「登録」「完了」「確定」など、意味の似たボタンが並んでいることでユーザが混乱してしまう設計です。
- ボタン名称が曖昧で、どの操作を選べばよいか判断できない
- 操作順序が画面上で明示されておらず、試行錯誤が必要
- 処理結果が即時に表示されず、誤操作に気づきにくい
- 同じようなボタンが複数あることで、心理的ストレスを誘発
4.2.3 入力項目が頻繁に変わる勤怠管理システム
利用者の混乱を招き、入力ミスや未入力の温床になってしまう設計です。
- フォーム構成や入力項目がバージョンごとに頻繁に変更され、慣れが通用しない
- 項目の必須・任意がわかりにくく、エラーが頻発する
- 入力補助機能が乏しく、すべて手動で入力しなければならない
- ヘルプやガイドも不十分で、ユーザが自己解決しづらい
良い画面設計は、ユーザの「わかりやすさ」「使いやすさ」「迷わなさ」を実現し、業務の生産性と正確性を高めます。
反対に、悪い画面設計は見た目が整っていても、業務の妨げになりかねません。
自社のシステムがどのタイプに近いかを振り返り、必要に応じて改善に取り組むことが、使われ続けるシステムづくりへの第一歩となります。
5. 業務システムの画面設計における重要なポイント

業務システムの画面設計を成功させるには、単に見た目を整えるだけでは不十分です。
- 業務フローに即した画面構成
- ユーザ目線での操作設計
- デザインの一貫性を保つ
- 情報の階層と優先順位の整理
- 入力のしやすさ・ミスの起きにくさ
- スマートフォン・タブレット対応
- 初心者でも使えるナビゲーションやヘルプ機能
ユーザの使いやすさと業務効率を両立するために、設計段階で意識すべきポイントを整理して解説します。
5.1 業務フローに即した画面構成
実際の業務手順に合わせて、画面遷移や項目配置を設計する必要があります。
業務フローとの整合性が取れていない画面設計では、かえって作業効率が下がるリスクがあります。
実務担当者の操作順を忠実に再現した画面設計 | 例:受注入力→内容確認→見積書出力までを1画面内で完結させる |
不要な画面遷移を減らし、1画面完結型を意識 | 例:発注処理を1ページで完了できるようにまとめる |
入力・確認・保存などの操作を業務フローに沿って配置 | 例:請求書発行業務における、右下に「保存」、左下に「戻る」ボタンを配置 |
ワークフローに応じたモジュール分割や画面遷移の導線設計 | 例:見積作成→承認→発注の流れに沿ってタブ構成を設計 |
5.2 ユーザ目線での操作設計
現場の担当者が「直感的にわかる」ことを基準に設計することが重要です。
ユーザが迷わず操作できることで、教育工数の削減や作業ミスの低減につながります。
初見のユーザでも迷わず操作できる構成 | 例:初回ログイン時に操作ガイドが自動表示される |
よく使う機能を目立つ場所に配置 | 例:「新規登録」ボタンを常に画面右上に固定表示 |
ラベルやボタン名を明快にする | 例:「完了」ではなく「注文を確定する」と具体的に記載 |
操作頻度に応じたナビゲーションの配置 | 例:見積作成→承認→発注の流れに沿ってタブ構成を設計 |
5.3 デザインの一貫性を保つ
ボタンの配置や配色ルールを統一することで、操作ミスを防ぎ、ユーザの学習コストも下げられます。
画面が変わっても「一目でわかる」状態を維持することが重要です。
一貫した配色やフォント、ボタン形状 | 例:登録ボタンはすべて緑色、キャンセルは赤色に統一 |
画面間でのレイアウトや操作方法の統一 | 例:一覧画面の並び順(日時・件名・担当者)を全ページで統一 |
共通パーツやUIコンポーネントの活用 | 例:ボタンや入力フォームは全画面で共通テンプレートを使用 |
エラーメッセージやアラートの統一ルール | 例:「入力エラーが発生しました。○○を確認してください」と定型文で表示 |
5.4 情報の階層と優先順位の整理
情報が多い業務システムでは、必要な情報がすぐ見つかる構成が求められます。
視線誘導や表示順の工夫が、操作のスムーズさに直結します。
重要な情報を左上や中央上部に配置 | 例:ダッシュボードの売上速報を左上に配置 |
折りたたみ機能やタブで情報を整理 | 例:詳細情報はアコーディオン形式で展開可能に |
強調したい内容はアイコンや色で差別化 | 例:エラー項目は赤枠・警告アイコン付きで強調 |
画面全体の情報設計におけるヒエラルキー構築 | 例:主情報→補足情報→操作ボタンの順で視線を誘導 |
5.5 入力のしやすさ・ミスの起きにくさ
ユーザの入力負担を軽減する設計は、業務のスピードと正確性に直結します。
誤入力を未然に防ぐ工夫も重要です。
入力補助(例:プルダウン・カレンダー選択)の活用 | 例:納期入力にカレンダー選択を採用し、曜日ミスを防止 |
バリデーションで未入力や入力ミスを即時通知 | 例:桁数不足の電話番号に「形式が正しくありません」と即表示 |
入力履歴や自動補完機能の導入 | 例:過去に入力した品番がサジェストされる検索欄 |
不要な手入力を減らすバーコード読み取りやテンプレート活用 | 例:倉庫作業でハンディ端末を使ってバーコード入力を自動化 |
5.6 スマートフォン・タブレット対応
現場や外出先でも操作できるよう、マルチデバイス対応を前提に設計しましょう。
PC専用の設計では、利便性が大きく制限されてしまいます。
ボタンや入力欄をタップ操作に適した大きさに設計 | 例:スマホ画面でも指で押しやすい44px以上のボタンサイズ |
スクロール・画面遷移を最小限に抑えたモバイルUI | 例:スマホで1ページに情報が収まるよう、要素を折りたたみ |
通信環境が不安定な状況でも安定して動作する設計 | 例:入力データをローカル保存し、電波回復時に自動送信 |
モバイルファースト設計で優先的に対応範囲を確認 | 例:スマホ中心で使われる業務から順に対応を開始 |
5.7 初心者でも使えるナビゲーションやヘルプ機能
誰でも迷わず使える仕組みがあることで、教育コストも削減されます。
サポートに依存しない自律的な操作環境を目指しましょう。
操作手順を示すステップナビゲーション | 例:5ステップで完了する進捗バー付き申請画面 |
ホバーやクリック時に説明を表示するツールチップ | 例:「顧客コード」欄に「登録済みの番号を入力」と表示 |
FAQや操作ガイドへの導線を画面内に設ける | 例:画面右上に「よくある質問」ボタンを常設 |
チュートリアル機能や動画ヘルプの統合 | 例:初回起動時に、画面の操作説明動画が自動再生 |
業務システムの画面設計では、「誰でも」「迷わず」「効率よく」使えることが最も重要なゴールです。
そのためには、業務に即した画面構成や一貫したデザイン、ユーザの立場に立った設計視点が欠かせません。
さらに、入力しやすさや視認性、モバイル対応といった要素を組み合わせることで、現場で本当に活用されるシステムに近づきます。
画面設計は見た目ではなく、業務そのものを支える仕組みづくりと捉えましょう。
6. 業務システムの画面設計を改善するためのポイント

画面設計は、一度完成させたら終わりではありません。
ユーザの使いやすさや業務の変化に合わせて、継続的に改善していく必要があります。
- 初期段階からのUX設計の導入
- ワイヤーフレームの活用
- UIデザインツールの活用
- ユーザテスト・ABテストの導入
- フィードバックループとPDCAサイクルの確立
このセクションでは、業務システムの画面設計を改善するために取り組むべき具体的な施策を紹介します。
6.1 初期段階からのUX設計の導入
業務システムの開発初期段階から、UX(ユーザ体験)を意識した設計を取り入れることで、後からの修正や不具合対応を減らすことができます。
- 実際の利用者像に基づいたペルソナ設計を実施し、ターゲットの業務理解を深める
- ユーザが画面上でどのように行動するかを想定したカスタマージャーニーを作成する
- 業務フローに合致したプロトタイプを早期に用意し、開発初期から検証を行う
6.2 ワイヤーフレームの活用
ワイヤーフレームは、画面構成の骨組みを示す設計図です。
ビジュアルデザインより前の段階で構成を固め、関係者の合意形成を助けます。
- 必要な機能・項目を整理し、情報の構造をシンプルに可視化
- 早期段階で社内外の関係者からフィードバックを受け、仕様のズレを修正
- 最小限のコストで改善ができるため、仕様変更によるリスクを軽減
6.3 UIデザインツールの活用
画面設計を視覚的に確認しながら改善するには、UIデザインツールの活用が効果的です。
操作感を再現したモックアップを作成でき、チーム内の共通理解やレビューにも役立ちます。
- ドラッグ&ドロップで簡単に画面試作ができ、繰り返し改善が可能
- 共同作業やリアルタイムコメントで、開発チームとスムーズな意思疎通を実現
- UIコンポーネントを再利用することで、画面全体の統一感を保つ
6.4 ユーザテスト・ABテストの導入
設計した画面が実際のユーザにとって使いやすいかを検証するため、定量・定性的なテストを行うことが重要です。
- 特定のタスクを与えて操作してもらい、つまずきポイントや誤操作を記録
- A案とB案の画面を比較し、どちらが直感的か・操作効率が高いかを数値で評価
- ヒートマップや録画機能を活用し、ユーザの視線や動きを詳細に分析
6.5 フィードバックループとPDCAサイクルの確立
システム導入後も、現場の声を反映し続ける仕組みを整えることで、画面設計の質を継続的に高めることができます。
- 定期的な利用者アンケートやユーザ会などを通じて現場の意見を収集
- 利用状況をログ分析し、どこで離脱やエラーが多いかを把握
- 改善策を立案・実行・評価・再改善するPDCAの運用体制を確立
画面設計の改善は一過性ではなく、継続的に取り組むべき課題です。
- 初期設計からユーザ視点を取り入れる
- 適切なツールを使い検証と修正を繰り返す
- そして導入後の現場の声を設計に還元する仕組みをつくる
このような視点を持つことで、業務にフィットした画面設計につながります。
7. 業務システムの画面設計を外注する場合のポイント

業務システムの画面設計を外部のパートナー企業に依頼する際は、コストや納期だけに注目するのではなく、いかに「業務を理解し、使いやすい画面を実現できるか」という視点が重要です。
外注先との連携方法や契約範囲、運用フェーズを見据えた体制づくりまで含めて考慮する必要があります。
- UI/UX専門のパートナー企業を選ぶ
- 要件定義で現場の声を反映させる
- プロトタイプ段階でのレビュー体制を整える
- 運用後の改善支援まで見据えて発注する
以下では、外注時に押さえておきたい具体的なポイントを紹介します。
7.1 UI/UX専門のパートナー企業を選ぶ
単なるシステム開発会社ではなく、UI/UX設計の専門知識と実績を持つ企業に依頼することで、使い勝手のよい業務システムが実現できます。
UI設計は「見た目」だけでなく、「業務フローとの整合性」「エラー回避の導線設計」など複合的な知見が必要です。

- ユーザ行動に基づいた設計の提案ができるか
- 同様の業種・業務システムの実績があるか
- UXリサーチやユーザテストの経験があるか
- フロントエンド実装まで一貫して対応可能か
7.2 要件定義で現場の声を反映させる
現場の業務を理解せずに設計されたUIは、高確率で形骸化します。
初期の要件定義段階から現場のキーパーソンを巻き込み、リアルな業務の流れや「困っている点」を洗い出しておくことが重要です。

- 日常業務の流れ・例外対応・操作上の課題をヒアリング
- 部門ごとに使い方が異なる場合は個別のユースケースを整理
- 現場主導でプロトタイプを検証・修正するサイクルを構築
- 「最もよく使う画面」「トラブルが多い操作」などに重点を置く
7.3 プロトタイプ段階でのレビュー体制を整える
完成前の段階でフィードバックを繰り返すことで、手戻りを減らし、品質の高い画面設計が可能になります。
特に、実際に使うユーザからのレビューは欠かせません。

- モックアップ・ワイヤーフレームを用いて早期にUIを可視化
- 各部門の現場担当者を含めた定期的なレビュー会を実施
- 使いにくさや混乱ポイントを事前に洗い出す
- レビュー結果の記録と対応方針のトレーサビリティを明確に
7.4 運用後の改善支援まで見据えて発注する
システム導入後も、現場の環境や業務内容の変化に伴ってUIの見直しが必要になります。
そのため「導入して終わり」ではなく、運用後の改善まで支援してくれるパートナーを選ぶことが望ましいです。

- 初期フェーズ後の定期レビューやフォロー体制があるか
- ユーザ行動ログや操作エラーの分析機能を活かした改善提案ができるか
- サポート契約・保守範囲に改善設計も含まれているか
- 実装だけでなく業務改善提案まで踏み込める体制があるか
8. 業務システムの画面設計にお悩みなら「ブリエ」

画面設計の重要性は理解していても、「どこから手をつければいいかわからない」「現場の声をどう設計に落とし込めばいいのか迷っている」という企業担当者も多いのではないでしょうか。
株式会社ブリエでは、業務システムの画面設計において以下のような支援を提供しています。
- 業務フローの可視化と整理から支援
- プロトタイプ作成による現場とのすり合わせ
- UI/UXのプロが伴走支援
- 改善・運用フェーズにも対応
画面設計は「センス」ではなく「論理」と「現場理解」でつくるものです。
業務に本当にフィットする画面設計を目指したい方は、ぜひブリエにご相談ください。
9. まとめ
- 現場業務の効率と正確性を左右する
- 操作性が悪いと定着率や満足度が下がる
- UI/UX設計は業務設計と直結する
- 使いやすさは教育コストや業務スピードにも影響
- 画面の構成は業務フローの再現に近い
- 入力・表示のしやすさが生産性を左右する
- 社内全体の情報共有や統一運用にも関係する
- 現場が使わないシステムは投資対効果が低くなる
- UIを「色や装飾」だと誤解している
- シンプル=機能不足だと思い込んでしまう
- ベテラン社員を基準にして複雑な設計になる
- 「マニュアルで対応できる」と思いがち
- 直感的な操作が前提であることを軽視しがち
- 属人的な知識を前提にした構成が多い
- 利用頻度と配置のバランスが崩れている
- デザインの一貫性が保たれていない場合がある
- 業務フローと画面設計を一致させる
- ユーザ目線での操作性を重視する
- デザインルールの一貫性を徹底する
- 情報の優先順位と階層構造を整理する
- 入力ミスを防ぐUI設計を工夫する
- モバイル対応などマルチデバイスを前提に
- 初心者向けのナビゲーションやヘルプを用意する
- よく使う機能を目立たせ、迷わせない設計にする
- UX設計の初期導入でニーズを可視化する
- ワイヤーフレームで構成認識を共有する
- UIデザインツールで動作を再現する
- ユーザテストで実際の操作性を検証する
- ABテストで最適なUIパターンを選別する
- ヒートマップでクリック傾向を視覚化
- PDCAサイクルで改善を継続する体制を整える
- フィードバックループで現場の声を反映
- ペルソナ設計でユーザ像を具体化する
- 実際のシナリオでUIをテストする
- 部門ごとの利用状況をレビューに活かす
- 操作頻度と負担を定量的に把握する
- 現場からの問い合わせ履歴を活用する
- 経験年数や職種に応じたUI分岐も検討する
- 現場参加型のレビューで運用イメージを共有
- 問題点の見える化で納得度の高い改善に
- 自社で設計を進めるのが難しいときは外部の知見を活用
- 業務理解に長けたパートナーと連携するのが重要
- システム導入・設計・運用までトータルで支援可能な企業が望ましい
- 実績が豊富で現場目線の設計を得意とする企業を選ぶ
- ヒアリングからUI改善まで丁寧に対応できる企業が安心
業務システムの画面設計は、見た目のデザインだけにとらわれず、業務フローやユーザ視点を取り入れることで、現場で本当に活用されるシステムに近づきます。
画面設計は、単なる見た目ではなく、業務全体を円滑にする「仕組み」として捉えていきましょう。

株式会社ブリエ代表取締役。Webデザイン、WordPress、Elementor、DTPデザイン、カメラマンなどを経て、FileMakerエンジニアとなる。企業の経営課題であるDX化、業務効率化、ペーパーレス化、情報の一元管理など、ビジネスニーズの変化に合わせてFileMakerで業務システムを開発し、柔軟に拡張して解決いたします。