
FileMakerエンジニア

「システム開発はお金がかかるだけでは?」そう感じる経営者・情報システム部門・現場責任者は少なくありません。
しかし、目的と削減目標を明確にし、現場の業務フローに沿って設計・導入・運用改善までを一貫して進めれば、システム開発をすることでさまざまなコストを中長期で大きく圧縮できます。
近年はクラウドやローコードなどの普及で初期投資も抑えやすく、スモールスタートで効果検証しながら全社展開する現実解が整いました。
- 人件費
- ITインフラコスト
- 管理コスト
- トラブル対応コスト
- 外注コスト
本記事では、まず「どこまでコスト削減が可能か」を整理し、削減しやすい費用の具体例や特に効果の出やすい領域を詳しく紹介します。
- 自社で優先的に削減すべき費目の見極め方
- 領域別の有効施策
- コスト削減の仕組みと効果の出し方
- コスト削減が進まないパターン
- 成功のためのポイントとステップ
自社で「どの費用を、どの手段で、どの順番で」削減すべきかを明確にして、着実なコスト最適化を実現しましょう。
目次
1. システム開発でコスト削減は可能?

企業がシステム開発に投資する理由のひとつに「コスト削減」があります。
「システム開発=コストがかかる」というイメージが強く、本当に削減につながるのか疑問に思う経営者も少なくありません。
結論から言えば、システム開発は適切に設計・導入されれば中長期的に大きなコスト削減効果を発揮します。
短期的には初期投資や導入コストがかかりますが、業務効率化や属人化の解消、人的リソースの最適化により、数年単位で大きな費用対効果を生み出すのです。
近年は「人手不足」「人件費の高騰」「市場競争の激化」といった背景から、無駄な作業を省き、限られたリソースを最大限に活かす仕組みが求められています。
その解決策としてシステム開発を活用することで、単なるコスト削減にとどまらず、業務の標準化・品質向上・従業員の生産性向上にもつながります。
また、クラウドやローコード開発の普及により、以前と比べて低コストかつ短期間でシステムを導入できる環境も整ってきました。
これまで「大企業だけのもの」と思われがちだったシステム開発が、中小企業でも十分に手の届く手段となりつつあるのです。
したがって「コスト削減のためにシステム開発を行う」という発想は、もはや特殊な戦略ではなく、現代の企業経営における必須の選択肢となっています。
2. システム開発で削減が可能なコストの例

システム開発そのものに、ある程度の費用がかかるのは当然です。
しかし、開発したシステムを活用することで中長期にわたってコスト削減ができるのであれば、費用対効果は非常に大きくなるはずです。
ここでは、システム開発することで削減効果が見込めるコストについて解説していきます。
2.1. 人件費
最も大きな削減効果をもたらすのは「人件費」でしょう。
手作業で行っていたデータ入力や集計、書類作成、在庫チェックといった業務をシステム化すれば、担当者の工数を大幅に減らせます。
- データ入力や集計にかかる工数
- 書類作成や棚卸し作業の時間
- 残業代や休日出勤手当
- 人員追加や派遣社員の雇用費用
- 採用/教育などの間接人件費
たとえば、毎月100時間かかっていた請求書処理をシステム化によって30時間に短縮できたとしましょう。
70時間分の人件費を年間で換算すると、数百万円規模の削減効果になります。
2.2. ITインフラコスト
従来は自社でサーバーを保有し、更新やセキュリティ対応を行う必要がありました。
クラウドサービスを活用することで、サーバーやオンプレミス環境の維持費は大きく削減できる可能性があります。
- サーバー購入費/設置費用
- 保守/後進に更新にかかる維持管理費
- セキュリティソフトや監視サービスの導入費
- バックアップや災害対策の運用費
- 専門エンジニアの人件費
クラウド導入により利用料が従量制となれば、初期投資や維持費を大幅に抑えられます。
2.3. 管理コスト
システム開発は「管理コストの削減」にも直結します。
- 在庫データや顧客情報の重複管理コスト
- 部署間の確認/照合作業にかかる工数
- 報告書作成や会議準備の時間
- 在庫過不足の調整コスト
- 生産計画の非効率によるロス
たとえば複数部署でバラバラに顧客情報を管理していると、確認や再入力に余計な手間がかかります。
一元管理すれば、会議や報告書作成にかかる作業時間も削減可能です。
2.4. トラブル対応コスト
システム開発は「トラブルを未然に防ぐ」という観点でもコスト削減に貢献しま
- ヒューマンエラーの修正にかかる時間
- 納期遅延に伴う違約金や損害賠償
- 二重請求/入力ミスの訂正コスト
- 顧客対応にかかる人件費
- 信用低下による二次的損失
業務を自動化/標準化することでミスや遅延を防止できれば、トラブル対応にかかる時間と費用を大幅に減らせます。
2.5. 外注コスト
外部に委託していた業務をシステム化によって内製化できれば、外注コストを削減できます。
- 経理処理やデータ集計の委託費用
- システム運用/保守の外注コスト
- 簡単なアプリ開発や改修にかかる外注コスト
- 外部コンサルティング費用
- 継続的なサポート契約料
ローコードツールを活用すれば、社内担当者が小規模な開発や改修を行えるため、長期的な外注コストの削減につながります。
3.コスト削減につながるシステム開発の領域

システムの開発・活用によって、コスト削減を見込めるのは確かと言えますが、削減規模は、業務領域によって差が出ます。
ここでは、特に効果が高い領域と効果が期待できるシステムについて詳しく解説していきます。
3.1. 【基幹業務領域】:販売・在庫・生産管理システム
基幹業務領域は、企業活動の中心を担う領域です。
販売・在庫・生産管理は毎日大量のデータを扱うため、少しの非効率が積み重なると大きなコスト増加につながります。
- 人力処理による「ムダ」や「ミス」が頻発する
- 生産計画と在庫状況が連動しておらず、過剰生産による在庫コスト増加が発生
- 欠品による販売機会損失が生じやすい
販売管理システムや在庫管理システムを導入することで、需要予測と在庫状況を自動照合し、最適な発注・生産計画が可能になります。
さらに、生産管理システムを組み合わせれば、余剰生産や欠品リスクを抑え、安定した供給体制を構築できます。
結果として、在庫ロス削減・倉庫費用削減・棚卸し効率化を実現できるのです。
3.2. 【バックオフィス領域】:経理・人事・勤怠管理システム
バックオフィスは企業運営を支える基盤であり、直接利益は生まなくても効率化次第で大きなコスト削減につながる領域です。
- 請求書処理や仕訳入力に多くの時間を要する
- 紙やExcelを用いた集計作業が残業や人件費増加につながる
- 事務作業の非効率さが人員追加を招き、コストが膨らむ
経理システムの導入により入力作業を自動化でき、人事・勤怠管理システムで打刻から給与計算まで一気通貫で処理可能になります。
クラウド型システムであれば低コストで導入でき、中小企業でも少人数で業務が回り、残業削減や人員増加の抑制につながります。
3.3. 【顧客管理領域】:CRM・マーケティング自動化システム
顧客データや営業活動の効率化は、企業の成長に直結する領域です。
ここでの非効率は「営業コスト増」や「商談機会の損失」として現れます。
- 営業担当ごとに顧客情報が分散し、重複や情報漏れが発生する
- 顧客フォローやメール配信が属人的で、人的リソースを圧迫する
- 情報が一元化されず、商談機会損失や営業効率低下につながる
CRMの導入により顧客データを一元化し、MAツールを活用することで顧客対応を自動化できます。
具体的には、メール配信やフォローアップを自動で実行できるため、営業効率の向上や成約率アップにつながります。
3.4. 【サプライチェーン領域】:調達・物流・配送管理システム
サプライチェーン領域は、調達から物流・配送まで幅広くコストが発生するため、効率化によるインパクトが大きい分野です。
- 在庫の過不足や配送遅延が発生しやすい
- 調達価格の不安定さがコストを押し上げる
- 輸送ルートの非効率や不良在庫が企業全体の損失を拡大する
物流管理システムを導入することで、輸送ルート最適化や配送スケジュール自動調整が可能になり、燃料費や配送コストを削減できます。
さらに、調達管理システムによって仕入先を一元管理すれば、交渉力向上や不良在庫削減もつながります。
3.5. 【業務自動化領域】:RPA(業務自動化)・AI(人工知能)活用システム
RPA(業務自動化)やAI(人工知能)を活用した業務自動化は、近年特に注目を集めている領域です。
人件費や残業代の削減だけでなく、業務品質の安定化にも効果を発揮します。
- 定型的なデータ入力やチェック作業に多くの時間を費やす
- 人的リソースがひっ迫し、付加価値業務に時間を割けない
- 経験や勘に頼った判断が誤発注や不良品発生のリスクを高める
RPA(業務自動化)によってデータ入力やシステム間転記を自動化し、AI(人工知能)を活用した需要予測や異常検知により判断精度を向上。
結果として「人件費削減」「業務スピード向上」「トラブル防止」を同時に実現できます。
システム開発でコスト削減を狙う際は、どの領域に注力するかを明確にすることが重要です。
それぞれの領域に適したシステムを導入することで、短期的な効率化と長期的な経営改善の両立が可能になります。
なお、最適なシステムの選択に迷った場合には、専門家からアドバイスを受けることをおすすめします。
株式会社ブリエでは無料相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
4. システム開発によるコスト削減の事例

システム開発によるコスト削減は、机上の理論ではなく、実際に多くの企業で成果を上げています。
ここでは業種別にいくつかの事例を取り上げ、どのような仕組みがコスト削減につながったのかを解説します。
4.1. 製造業:在庫管理システム導入で棚卸し工数を半減
製造業では、部品や原材料などの在庫管理が複雑化しやすく、在庫ロスや棚卸し作業の負担が経営課題となることが少なくありません。
課題:ある中堅製造業では、毎月の棚卸しに延べ200時間以上を要し、Excelでの手作業管理により在庫差異が頻発。
調整に追加人員が必要で、人件費が膨らんでいた。
対策 | クラウド型の在庫管理システムを導入し、入出庫のタイミングで在庫が自動更新される仕組みを構築。 リアルタイムで正確な在庫数を可視化。 |
結果 | 棚卸し作業は半分以下に短縮され、年間数百万円規模の人件費を削減。 差異調整コストや在庫ロスも同時に減少した。 |
4.2. 小売業:POSシステムとEC連携で在庫ロスを削減
小売業では、実店舗とECサイトでの在庫管理が分断されやすく、在庫ロスや欠品の原因になってしまうという課題があります。
課題:あるアパレル企業では、店舗ごとの在庫とEC在庫が分断され、ある店舗では売れ残り、ECでは欠品が発生。
販売機会の損失と在庫ロスが問題化していた。
対策 | POSシステムとECシステムを連携させ、在庫を一元管理できる仕組みを導入。 |
結果 | 欠品・過剰在庫が大幅に減少し、仕入れコストが最適化。 販売機会損失も防止され、売上増加とコスト削減を同時に実現。 |
4.3. サービス業:勤怠・給与システムのクラウド化で人事コスト削減
サービス業は従業員数が多く、シフト管理や勤怠管理に多大な手間がかかるのが特徴です。
人事部門の負担が大きくなりやすく、コスト増加につながります。
課題:ある飲食チェーンでは、各店舗の打刻を紙で管理し、本部で手入力。給与計算に膨大な時間がかかり、人事部は残業過多でコストが増大していた。
対策 | クラウド型の勤怠・給与システムを導入。店舗の打刻データを自動集約し、シフトと連携して給与計算まで自動処理できるようにした。 |
結果 | 給与計算時間を70%以上削減し、人事部の残業代も圧縮。 給与計算ミスも減少し、従業員からの問い合わせ対応時間も削減された。 |
4.4. 建設業:現場アプリ導入で書類作業を大幅削減
建設業では、現場での進捗報告や安全管理が紙ベースで行われることが多く、本社との情報共有に時間とコストがかかりがちです。
課題:ある建設会社では、現場で1日30枚以上の紙書類を使用し、本社に提出・転記する作業が非効率。
事務担当者に大きな負担がかかっていた。
対策 | スマホやタブレットから現場報告を入力できるアプリを開発。 作業員が直接入力し、本社が即時に確認できる体制を整備。 |
結果 | 紙や郵送費を削減でき、事務工数も大幅に短縮。 書類作業の効率化が進んだことで、結果的にデータ反映が迅速になり、工期遅延や追加費用のリスクも減少した。 |
4.5. IT企業:RPA導入で定型業務の自動化
IT業界でも、データ入力や集計といった定型業務は意外と多く、人件費や残業コストの増大要因になっています。
課題:あるIT企業では、毎日数千件のデータを複数システムへ手作業入力しており、残業代と入力ミスの修正コストが大きな負担となっていた。
対策 | RPAを導入し、データ転記や集計といった定型業務を自動化。 担当者は付加価値の高い業務へシフト。 |
結果 | 月間数百時間の工数削減を実現し、人件費とミス対応コストを大幅に削減。 従業員の生産性も向上した。 |
5. システム開発によるコスト削減が進まない理由

システム開発は確かに大きなコスト削減効果をもたらしますが、すべての企業が成功するわけではありません。
中には「システムを導入したのに逆にコストが増えた」「期待した効果が出なかった」という声もあります。
こうした失敗にはいくつかの共通要因があります。ここでは代表的な理由を解説します。
5.1. 初期投資への抵抗感
システム開発は短期的に見れば決して安価ではなく、効果が出るまでに数カ月から数年かかるケースもあります。
そのため経営層や現場担当者が「すぐに投資を回収できなければ意味がない」と判断し、必要な機能を削ったり安価なシステムを選んだりすることがよくあります。
しかし目先のコスト削減を優先すると、実際には機能不足や改修の追加費用で総コストが増えるという逆効果につながりやすいのです。
- とりあえず安いシステムを導入したが、業務に合わず追加改修費用が膨らんだ。
- 安価なパッケージを選んだ結果、必要機能が不足して外部ツールを併用した結果、コストが倍増した。
このように、長期的な投資対効果を見ずに初期費用だけで判断することが最大の落とし穴です。
5.2. 要件定義の不十分さ
システム開発の失敗要因として最も多いのが「要件定義不足」です。
本来は「どの業務を効率化したいのか」「どのコストを削減したいのか」を具体的に整理すべきですが、曖昧なまま開発が進められるケースは少なくありません。
特に現場の声を吸い上げないまま進めると、完成したシステムが実態と合わず「思っていたものと違う」という事態を招きます。
- 人件費削減が目的だったのに、デザイン性や使う頻度の少ない機能にリソースを割いてしまった。
- 現場ヒアリングを行わずに進めた結果、業務に合わず従業員が使わなくなった。
要件が不明確だと開発中に「せっかくだからこの機能も」と追加要望が増え、結果として工期やコストが膨張します。
要件定義の段階で削減対象と必要機能を明確にすることが不可欠です。
5.3. システムが現場に定着しない
優れたシステムを導入しても、実際に現場で使われなければ意味がありません。
現場が使いにくいと感じたり、教育やサポートが不足していたりすると、従来のやり方と併用され、むしろ工数が増えることすらあります。
つまり「定着しないシステム=コスト削減につながらないシステム」と言い換えても過言ではありません。
- 新システムの操作が複雑で、結局紙やExcelとの二重管理が続いた。
- 研修が不十分で入力ミスが多発し、現場が「余計に手間がかかる」と感じてしまった。
現場での利用頻度が高いシステムほど、導入時のトレーニングやマニュアル整備が欠かせません。
また、要件定義の段階から現場を巻き込むことで「自分たちのためのシステムだ」という納得感を持たせることも重要です。
5.4. 運用・保守の想定不足
システム開発は導入して終わりではなく、運用・保守を含めることで成果を生みます。
しかしここを軽視して体制を整えない企業は少なくありません。
クラウド型やサブスクリプション型のシステムは初期費用を抑えられる一方、月額利用料というランニングコストが発生します。
これを十分に見込まずに導入すると「固定費が減らない」「むしろ増えた」という事態を招きかねません。
- 保守契約を結ばず、トラブルのたびにスポット対応を依頼して高額請求を受けた。
- サブスク型システムの利用料を予算化しておらず、ランニングコストが増え続けた。
導入段階で「運用・保守にかかるコスト」をあらかじめ想定し、予算と体制を確保することが成功の前提条件です。
5.5. 属人化やベンダーロックインの問題
最後に注意すべきは「属人化」と「ベンダーロックイン」です。
属人化とは、一部の担当者だけがシステムを理解している状態で、その人が異動・退職すると運用が滞ってしまうことを指します。
また、ベンダーロックインは特定の開発会社に依存することで、追加改修やサポートを高額で依頼せざるを得ない状態です。
どちらも長期的には大きな負担となり、コスト削減効果を失わせます。
- 担当者が退職した途端、誰もシステムを扱えず、外部業者に高額費用を支払うことになった。
- 独自仕様に縛られて、改修のたびに高額見積もりを提示される。
属人化を防ぐには複数人で知識を共有すること、ベンダーロックインを避けるには標準規格やオープン技術を採用することが重要です。
さらに、導入時のドキュメント整備やパートナー選定の慎重さが、その後のコスト構造を大きく左右します。
システム開発でコスト削減が進まない理由は、決して技術的な問題だけではありません。
「投資を短期的にしか見ていない」「目的が曖昧」「現場が使わない」「運用設計がない」「属人化・依存状態に陥る」といった人や組織の問題が大きいのです。
これらを理解しておくことで、導入時に失敗を防ぎ、効果的にコスト削減へつなげることができます。
6. システム開発でコスト削減を成功させるポイント

システム開発をコスト削減につなげるためには、導入そのものがゴールではありません。
重要なのは「どう活用し、定着させ、継続的に改善していくか」というプロセスです。
ここからは、成功のために押さえておきたいポイントを紹介します。
6.1. 目的と削減目標を明確にする
システム導入を検討する際、まず明確にすべきは「どのコストを、どれだけ削減するのか」という目標です。
ここがあいまいなまま進めると、途中で「便利そうだから」という理由で機能が追加され、開発費が膨らむだけで効果が見えなくなる危険があります。
具体的な数値目標を設定することで、投資対効果を測定しやすくなり、改善すべきポイントも明確になります。
また、目標は経営層だけが理解していれば良いのではなく、現場の担当者とも共有して初めて機能します。
全員が同じ方向を向いて取り組むことで、導入後の運用がスムーズになり、効果が持続します。
- 削減対象を具体的に決める
- 数値で目標を設定する
- 経営層と現場で共通認識を持つ
6.2. 現場の業務フローを可視化・整理する
どれほど優れたシステムでも、現場の実態に合わなければ効果は出ません。
導入前に業務フローを丁寧に可視化し、無駄や重複が多い部分、属人化している作業を明確にすることが重要です。
たとえば、営業部門では「顧客データの入力に時間がかかっている」、経理部門では「請求書処理が属人化している」といった課題が見えてきます。
こうした業務フローを把握すれば、どこをシステム化すれば最も効果が出るかが明確になり、導入後の効果測定にもつなげられます。
- 部署ごとに業務フローを図解/整理する
- 属人化している業務を洗い出す
- 定量的に課題を把握する
6.3. 小規模から段階的に導入する
「一度に全社導入したほうが早い」と考える企業もありますが、これは大きなリスクを伴います。
現場が操作に慣れなければ業務が停滞し、旧システムとの二重管理が発生してコストが増えてしまうケースも少なくありません。
そのため、まずは一部の部署や業務に絞って導入し、効果を検証してから全社展開するスモールスタートが効果的です。
段階的に導入すれば、現場がシステムに慣れる時間も確保でき、改善点を反映させながらスムーズに展開できます。
- 部署単位/業務単位で試験導入する
- 効果を検証し、改善を反映してから全社展開する
- 現場が慣れる期間を確保し、定着率を高める
6.4. クラウド・ローコード開発を活用する
近年はクラウドやローコードといった仕組みを活用することで、開発や運用のコストを大幅に抑えることが可能です。
クラウド型システムを採用すれば、自社でサーバーを購入・維持する必要がなくなり、従量課金でコストを柔軟に調整できます。
加えて、ローコード開発を取り入れれば、現場担当者でも小規模なアプリ改修や機能追加が可能となり、外注コスト削減と改善サイクルの高速化が実現します。
さらに、セキュリティやバックアップもベンダー側が担ってくれるため、運用負担も軽減されます。
ただし、これらは高度な要件には向かないなどの制約もあるため、自社の業務規模や複雑さに合わせた選択が欠かせません。
- クラウドで初期投資/保守コストを抑える
- ローコードで開発スピードを高め、外注コストを削減する
- 自社の業務規模に合った方式を選ぶ
6.5. 社内にシステム担当者を配置する
システムは導入して終わりではなく、運用・改善を続けてこそ効果を発揮します。
そのためには、社内に専任または兼任のシステム担当者を配置することが不可欠です。
担当者がいない場合、ちょっとした改修やトラブル対応でも外部ベンダーに依頼せざるを得ず、そのたびに追加費用が発生します。
逆に社内にシステム担当者がいれば、現場からの要望をすぐに吸い上げ、改善に反映でき、長期的なコスト削減につながります。
さらに、担当者が蓄積した知識やノウハウは、社内における「資産」となり、属人化やベンダー依存のリスクも軽減できます。
- 社内にシステム担当者やエキスパートを配置する
- 現場の要望を素早く吸い上げて改善につなげる
- ベンダーに丸投げせず、自社で一定のスキルを確保する
6.6. 定期的に効果測定を行いPDCAを回す
システム導入の効果は一度確認して終わりではありません。
定期的に効果測定を行い、改善サイクルを回してこそ、長期的なコスト削減につながります。
たとえば「残業時間がどれだけ減ったか」「在庫ロスがどれだけ減ったか」といった数値を半年ごとに測定し、当初の目標と比較します。
結果が期待を下回っていれば運用ルールや設定を見直し、改善を重ねる必要があります。
このPDCAサイクルを継続すれば、導入当初は小さかった効果も徐々に拡大し、ROI(投資利益率)を数倍に伸ばすことも可能です。
- 半年ごとに効果を測定する
- 目標と実績を比較し、改善点を特定する
- PDCAサイクルを回して効果を持続/拡大する
7. コスト削減を実現するシステム開発のステップ

実際にシステム開発を進める際には、どのように進めればよいかのポイントを理解する必要があります。
ここでは、コスト削減を成功させるための具体的な流れを解説します。
7.1. 課題の整理と業務分析
まずは自社の現状を正しく把握することから始めましょう。
「人件費が膨らんでいる業務はどこか」「在庫管理のどこで無駄が生じているか」といった課題を整理し、現場ヒアリングや業務フロー分析を通じて可視化します。
このステップで課題を曖昧にしたまま進めると、システム開発が的外れになり、結果としてコスト削減効果が得られません。

- 無駄な作業や二重入力が発生している業務を特定したか
- 数値(時間・人件費・在庫ロス額など)で課題を把握しているか
- 現場担当者から直接ヒアリングを行ったか
7.2. 要件定義と開発範囲の明確化
次に「どの機能を開発すれば課題を解決できるのか」を定義します。
要件定義では「必須機能」と「付加機能」を明確に分け、優先順位をつけることが重要です。
また、開発範囲をきちんと区切らないと「せっかくならこれも追加しよう」という要望が増えてしまい、コストや工期が膨らむ原因となります。

- 解決したい課題と、それに対応する機能を明確に整理したか
- 必須機能とオプション機能を区分できているか
- 開発範囲をドキュメント化し、経営層と現場の双方で合意できているか
7.3. ツール選定とPoC(概念実証)
要件が定まったら、それを実現できるツールや技術を選定します。
クラウド型かオンプレ型か、ローコードかフルスクラッチか、といった選択肢を比較し、最もコスト削減効果の高い方法を検討します。
導入前には PoC(概念実証) を行い、小規模で試験的に導入して実際の効果を確認することが推奨されます。これにより失敗リスクを低減できます。

- ツール選定時に「コスト削減効果」を定量的に比較したか
- クラウド/ローコード/オンプレなど複数の選択肢を検討したか
- PoC(概念実証) を通じて現場での使いやすさや効果を検証したか
7.4. 本開発と運用開始
PoC (概念実証)で効果を確認できたら、本格的な開発に着手します。
この段階では、現場の担当者も巻き込み、運用ルールを整備することが大切です。
システム自体が優れていても、運用ルールがなければ定着せず、効果が出ません。
運用開始後は「現場での使いやすさ」「既存システムとの連携」「不具合対応」などを確認し、スムーズな定着を支援します。

- 開発中に現場担当者がテストに参加しているか
- 運用ルールやマニュアルを整備しているか
- 運用開始後にフォローアップや問い合わせ対応の窓口を設けているか
7.5. 導入後の効果測定と改善
最後のステップは、導入後の効果を測定し、改善を繰り返すことです。
当初設定した人件費削減や在庫ロス削減などの目標と実際の数値を比較し、乖離があればシステムの改善や運用ルールの見直しを行います。
システム開発は「完成して終わり」ではなく、継続的に改善することで初めて長期的なコスト削減効果が得られるのです。

- 導入前に設定した目標数値と比較しているか
- 半年〜1年ごとに効果測定を行っているか
- 測定結果をもとに改善施策を検討・実行しているか
8. システム開発でコスト削減を実現したいならブリエ

コスト削減は導入して終わりの単発施策ではなく、「業務×IT×運用」を横断する継続プロジェクトです。
ブリエは、中小~中堅企業の現場実態に即して、スモールスタート→効果検証→全社展開までを伴走します。
- 現場を徹底理解:ヒアリングと業務観察で課題を数値化し、無駄や二重入力を特定
- 削減効果を見える化:人件費/在庫ロス/外注費など、削減対象とKPIを明確に設定
- 小さく始めて効果を実証:PoC(概念実証)で早期に成果を検証し、段階的に展開
- 低コスト/柔軟な開発:クラウドやローコードを活用し、導入コストと改修負担を軽減
- 定着と自走を支援:教育/マニュアル/運用体制まで整備し、内製化を後押し
株式会社ブリエでは無料相談を承っております。
「何から手を付ければよいか分からない」「費用対効果はどれくらい見込めるか」といったお悩みがあれば、お気軽にお問い合わせください。
9. まとめ
- システム投資は中長期の費用構造を最適化するための経営施策
- 人手不足/人件費高騰/競争激化のなか、ムダの固定化は致命傷
- クラウド/ローコード普及で初期投資のハードルは低下
- 「導入=ゴール」ではなく、定着と改善が成果を決める
- 数値目標とKPIを起点に、効果を測れる設計にする
- スモールスタート→全社展開がリスクと投資の最適解
- 人件費:定型作業の自動化、残業抑制、人員追加の回避
- ITインフラコスト:サーバー/保守/バックアップ/セキュリティのクラウド移行
- 管理コスト:在庫・顧客・予約等の一元管理と報告・会議工数の削減
- トラブル対応コスト:二重入力・請求ミス・納期遅延を標準化で未然防止
- 外注コスト:ローコード/内製化で小規模改修・運用保守の内製比率
- 基幹(販売・在庫・生産):需要予測×在庫連動で在庫/倉庫費用を圧縮
- バックオフィス(経理・人事・勤怠):入力自動化と一気通貫処理で工数削減
- CRM/MA:顧客データ一元化と自動フォローで営業効率&成約率を向上
- サプライチェーン(調達・物流):ルート最適化と仕入先管理で原価/配送費を最適化
- RPA/AI:転記・照合・検知の自動化で人件費/エラーコストを削減
- 目的と削減目標を明確化(費目×数値×期限)
- 業務フローの可視化(二重入力・属人化・滞留の可視化)
- スモールスタート(限定領域でPoC→横展開)
- クラウド&ローコード活用(初期/保守/改修コストの最小化)
- 社内のシステム担当配置(運用・改修の即応性を確保)
- 定期の効果測定とPDCA(半年サイクルで改善)
- 運用・保守設計を先に決める(体制・予算・SLA)
- ベンダー依存回避の設計(ドキュメント整備、オープン技術)
- 課題の棚卸し(工数/ミス/遅延/在庫ロスの可視化と数値化)
- 要件定義(必須機能とオプションを分離、範囲固定)
- ツール選定とPoC(複数案のTCO比較、現場評価)
- 本開発&運用設計(権限・ルール・教育・マニュアル)
- データ移行と連携(マスタ整備、移行計画、API/ETL)
- ローンチと定着化(オンボーディングとQA体制)
- 効果測定と改善(KPIダッシュボード、改善要望の継続反映)
システム開発によるコスト削減は、単なる「IT投資」ではなく、企業の競争力を左右する経営戦略の一部です。
正しいステップを踏めば、確実に成果を積み上げられます。
自社に最適な道筋を描き、着実に費用対効果を最大化していきましょう。

株式会社ブリエ代表取締役。Webデザイン、WordPress、Elementor、DTPデザイン、カメラマンなどを経て、FileMakerエンジニアとなる。企業の経営課題であるDX化、業務効率化、ペーパーレス化、情報の一元管理など、ビジネスニーズの変化に合わせてFileMakerで業務システムを開発し、柔軟に拡張して解決いたします。