FileMakerエンジニア
通訳・翻訳業界では、案件が発生するたびに適性のある外注スタッフへ一斉連絡を取る業務が頻繁に発生します。
通訳・翻訳サービス会社のA社様でも同様で、スケジュール管理システムから外注スタッフのメールアドレスをコピーして、外部のメーラーで1件ずつメールを作成していました。10名以上への連絡が必要になることも多く、同じような内容のメールを何度も作成するのは大きな時間ロスでした。また、複数のメールを作成する中、送信漏れや送信先の誤りなども発生していました。
今回は、この課題を解決するため、FileMaker（ファイルメーカー）内にメール送信機能を開発した事例をご紹介します。複数宛先への一括送信、テンプレート機能、複写機能などにより、劇的な業務効率化を実現しました。
目次
課題：非効率な連絡業務
業務の背景
通訳・翻訳業界では、専門性や言語、地域などの条件で案件に合致する人材が限られています。そのため、案件受注後に適性のある外注スタッフを選定し、スケジュールが空いている全員に同時連絡をするのが一般的となっています。
A社様では限られた人材の効率的な活用を目的とし、案件の進行管理から通訳者・翻訳者のスケジュール管理を含む、業務全般をFileMakerで一元管理されていました。
運用上の問題点
外注スタッフのスケジュール管理、候補者の選定はFileMakerで作成した業務システムで行っていましたが、通知は外部のメーラーで行っていました。アプリケーション間の連携はなく、以下の手順を何度も繰り返し、連絡業務を行っていました。
- スケジュール管理画面で適性のある通訳者・翻訳者を検索
- 対象者のメールアドレスを一つずつコピー
- 外部メーラーを起動して宛先を貼り付け
- 件名と本文を入力して送信
しかし、この手順では手作業で行う箇所が多くあります。そのため、以下のような問題が顕在化していました。
- 時間の浪費 ：同じ内容のメールを何度も作成
- ミスの発生 ：宛先の入力ミスや送信対象の漏れ
- 作業の煩雑さ：業務システムとメーラーを行き来する手間
- 情報の属人化：定型文やテンプレートが個人のメーラーに依存
解決策：FileMaker製専用メーラーの開発
コンセプト
FileMaker内で完結する送信専用のメール機能を開発し、外部アプリケーションとの連携を不要にしました。一斉送信に特化したシンプルな設計です。
主要機能
複数宛先一括送信
スケジュール画面から送信対象者を選択し、「メール」ボタンを押すだけで専用のメール画面が起動します。送信先リストに対象者が表示され、メール内容を作成後「送信」ボタン1回で全員に同時送信できます。
テンプレート機能
よく使うメール内容をテンプレートとして登録できます。件名、本文、署名をセットで保存し、必要な時にワンクリックで呼び出せます。
「テンプレートを挿入」ボタンを押すと、登録済みのテンプレート一覧が表示されます。テンプレートタイトルから選択して「挿入」ボタンを押すだけで、件名と本文が自動的に入力されます。
件名：通訳案件のご相談（●月●日）
本文：
いつもお世話になっております。
株式会社〇〇〇のブリエ 太郎です。
新規お問い合わせでございますが、
下記日程のご都合はいかがでしょうか。
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顧客名：
日時：●月●日 集合●時 本番●-●
場所：
通訳手法：逐次or同通
通訳人数：●人
会議内容：
参加者人数：
備考：
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ご多忙の折恐れ入りますが、ご確認いただけますと幸いです。
本件何卒宜しくお願い致します。
複写機能
一度作成したメール内容を他の送信先に簡単にコピーできます。基本的な内容は同じで、一部だけ変更したい場合に便利です。大型案件で対象者が多い時に特に威力を発揮します。
「他の送信先から複写」ボタンを押すと、送信先リストが表示されます。複写元にしたい送信先の「選択」ボタンを押すだけで、その内容が現在編集中の宛先にコピーされます。画面下部の「選択した内容で他の送信先も置き換える」にチェックを入れれば、一括で全員に複写することも可能です。
導入効果：劇的な業務効率化を実現
作業時間の大幅短縮
従来の作業：10名への連絡に約30分
- メールアドレスのコピー作業：10分
- 外部メーラーでの個別メール作成：20分
改善後：同じ作業が約5分で完了
- 対象者選択からメール作成まで一画面で完結
- テンプレート機能で定型文を瞬時に挿入
- 転写機能で一部修正のみで個別対応
品質向上とミス削減
従来の問題点
- 宛先の入力ミス
- 送信対象の漏れ
- 案件情報の記載漏れ
改善効果
- システム連携により宛先ミスを完全排除
- 送信対象の一覧表示で漏れを防止
- テンプレート機能で記載項目を標準化
まとめ
FileMaker内に専用メーラー機能を開発することで、通訳・翻訳業界特有の複数人への一斉連絡業務を劇的に効率化できました。
- 作業時間を約1/6に短縮
- 送信ミスの大幅削減
- テンプレート機能による業務標準化
- 転写機能による柔軟な対応力向上
- OAuth 2.0による安全なメール送信
- JSONによる効率的なデータ管理
- FileMakerServerでの安定した送信処理
- 詳細なログ管理
この事例は、FileMakerの柔軟性を活かし、業務に特化した機能開発による、大幅な業務効率化の可能性を示しました。
株式会社ブリエでは、FileMakerを活用した業務システムの開発・改善を行っており、メール送信機能の統合や業務効率化についてのご相談を承っています。お気軽にご相談、お問い合わせください。
株式会社ブリエのプロジェクトマネージャー。将来的な可能性やリスクを考慮した幅広い視野を持ち、最適な選択肢を提案できるプロフェッショナル。FileMakerをはじめとするローコード開発に精通し、豊富な専門知識を活かして顧客に最善のサービスを提供する。常に冷静で的確な判断を下し、複雑な問題に対しても高度な分析力で解決策を導き出す。
