FileMakerエンジニア
現場の業務に合わせて、社内メンバーの手でFileMaker(ファイルメーカー)システムを構築・育成していく「セルフビルド(内製開発)」。
セルフビルドがもたらす高い柔軟性こそがFileMaker最大の強みですが、現場の運用が定着するにつれて避けて通れない壁が存在します。それが「入力チェック(エラー判定)」の追加や変更です。
「この項目の組み合わせの時は警告を出したい」「入力ミスによるトラブルを未然に防ぎたい」といった現場の要望に応えていくうちに、システム内部の判定ルールが数十種類へと膨れ上がってしまうケースは決して珍しくありません。
しかし、チェック条件が増えれば増えるほど、修正時の手間やミスが増え、システムの保守が複雑化してしまうという悩みが生まれます。
今回は、そんなエラー判定の複雑化を防ぎ、AIを活用して安全かつスピーディーに条件を拡張できる、FileMakerの設計アイデアをご紹介します。
目次
1. 現場の悩み:ルールが増えるほど、修正の手間と時間がかさんでいく
セルフビルドでシステムを育てる際、最初に思いつく最も素直な方法は、スクリプト上に「If」や「Else If」のステップを一つずつ追加してエラー判定を増やしていく方法です。
最初のうちはこの方法で問題なく運用できますが、チェックしたいルールが数十種類と増えてくると、以下のような課題やトラブルにぶつかります。
| 課題 | 現場で発生する不都合・トラブル |
| 可読性の低下 | スクリプト上のステップが縦に大きく伸び、分岐が「深いくの字(ネスト)」になって全体の構造が把握しづらくなる |
| 手作業リスク | 条件を1つ追加・移動するだけでもマウス操作(GUI)が多く、位置の入れ替えミスや設定漏れの原因になる |
| 改修スピードの低下 | 1箇所の修正が他の分岐にどう影響するかが見えにくく、確認とテストに余分な時間がかかる |
「チェック条件を1つ追加したいだけなのに、スクリプトの確認と修正作業に時間がかかる」という状態は、システムの改修スピードを落とす大きな要因になります。
2. 解決のアプローチ:処理を「判定フラグ」と「テキスト」に集約
この課題を解決するために、処理の組み立て方を工夫し、「1本の判定フラグ」としてシンプルに整理する設計アイデアをご紹介しています。
具体的には、スクリプト上に大量のIfステップを並べる代わりに、スクリプトの「変数を設定」の中で条件判定を一括処理します。該当したエラーの「判定フラグ(エラーコード番号)」だけを変数に返す仕組みです。
判定テキストの構造イメージ
条件Aに該当 ➔ エラーコード「101」
条件Bに該当 ➔ エラーコード「102」
条件Cに該当 ➔ エラーコード「205」
正常(エラーなし) ➔ エラーコード「0」
この設計にすることで、スクリプト側の処理は「エラーコードが0でなければメッセージを出して処理を止める」という1つの分岐(ネストなし)だけで済むようになります。どれだけルールが増えても、スクリプト自体の構造は一切複雑化しません。
また、吐き出されたエラーコード(例:205)とメッセージを紐づける「エラーコードマスタ」を別で用意しておくことで、「なぜエラーになっているのか」の理由も一元管理できるようになります。
3.ここがポイント:AI × コピペで「安全」に拡張できる
この設計の最大の強みは、判定ルールが「テキストデータ」として1箇所に整理されていることです。
さらに実践的な工夫として、テキストの冒頭に「システムで使われている判定用の項目リスト(辞書)」をコメントとして書き添えておく方法を取り入れます。
/* ==================================================
【AI参照用:判定に使用できる項目リスト】
・受注区分(通常 / 見積 / 特注)
・合計金額(数値)
・指定納期(日付)
・顧客ランク(一般 / VIP / 与信保留)
================================================== */
Case (
…(ここにルールが並ぶ)…
)
この「項目リスト」が一緒に入っていることで、AIとやり取りする際に決定的なメリットが生まれます。
AIの「誤生成」を的確に防ぐ
AIにテキストを丸ごと渡すだけで「このシステムで使える正しい項目」を正確に理解するため、存在しない項目をAIが勝手に作ってしまう事故(ハルシネーション)を強力に防止できます。日本語の指示だけで一発修正できる
「顧客ランクが『一般』で金額が100万円以上ならエラーコード44を返す処理を追加して」とAIに一言伝えるだけで、プログラミング構文を間違えずに即座に修正案が生成されます。
手作業で複雑な分岐設定をポチポチと組み立てる必要がなくなり、AIを活用した「コピペ感覚の安全な条件追加」が可能になります。
4. この設計がもたらす「運用と保守」の大きなメリット
この仕組みを取り入れることで、日々のシステム運用や将来の改修において、以下のような具体的なメリットが生まれます。
改修スピードの向上
ルールの追加・修正がテキストのコピペで安全に行えるため、現場の「早くルールを変更したい」という要望に即座に対応できるようになります。スクリプトのネストを完全解消
画面上の「複雑な入れ子構造」が発生しないため、長年運用してもシステムが重厚長大化せず、常に見通しの良い状態を保てます。保守の属人化を防止
エラーコードマスタと連動させることで、どの画面でどんなエラーが定義されているかが一覧で整理され、担当者が変わっても迷わずスムーズに保守を引き継げます。
まとめ
ビジネスが成長・変化すれば、業務のルールが変わるのは当然のことです。業務システムは「作って完成」ではなく、変化に合わせて柔軟に育てていけるかどうかが重要になります。
FileMakerの柔軟性と、「変数を活用したテキスト化×AI活用」という設計の工夫を組み合わせることで、どれほどルールが複雑になってもスピーディーかつ安全に対応できるシステムが実現できます。
「自社の複雑なルールをシステム化したいけれど、後からの変更や維持管理が大変そう…」とお悩みの方は、ぜひお気軽に株式会社ブリエまでご相談ください。
株式会社ブリエのプログラマー。サービス、製造、IT分野と幅広い業界の現場で培った実務経験を活かし、お客様の潜在的なニーズに応えます。デジタルとアナログ両面の良さを生かし、「本当に使いやすい」と感じる、業務効率化に直結したシステム構築を実現します。休日はDIY、バイク、カヌー、ラジコン、ギターなど、ものづくりや趣味に没頭するアクティブ派です。








