【機能事例】FileMakerレイアウトを進化させるドラッグ&ドロップ対応UI開発事例

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執筆者:諏訪田 隆星

FileMakerエンジニア

「在庫はあるはずなのに、どこに消えた?」
製造や商社の現場業務の中で日々繰り返されている嘆きです。
この嘆きは、紙・Excel・口頭連絡が複雑に絡み合う限りなくならない……常々そう思われてきました。
しかし、操作性に優れたシステムを導入することで、在庫の所在や割当状況の見える化を実現が可能です。
弊社でも、FileMaker(ファイルメーカー)を活用した「ドラッグ&ドロップ」の実装により操作性を高め、課題を解決した実例があります。
本文では、東海地方で油圧シリンダ用部品を製造する A社 が「在庫迷子ゼロ」を実現した 「在庫引当ボード」 の導入プロセスとその効果を、現場のリアルな声を交えながら、紹介いたします。

目次

背景と課題

東海地方に拠点を置く油圧シリンダ用部品メーカー A 社 では、材料と仕掛品、完成品を合わせて 1,200 品目 を取り扱い、受注は 1 日平均 250 件、繁忙期には 400 件を超えます。
7 つの自社倉庫と 3 つの委託倉庫に分散した在庫を毎日さばく中、現場では次のような問題に直面していました。

  • 在庫・受注・発注の各伝票が 部門ごとに異なる Excel で管理されている

  • 進捗共有は電話・口頭・付箋紙が中心。リアルタイム性ゼロ

  • 引当処理は担当者の経験則で行われ、処理根拠がブラックボックス化

  • 最終業務には「二重引当」「在庫取り違え」「特急仕入れ」のリカバリ対応に追われる

こうした問題は、次のような業務上のボトルネックとして顕在化していました。

課題

A 社ではこうしたムダな調整作業に1日でかなりの時間をとられておりその分コストが発生。
人的ミスが多く起こる中、ストレスによる生産性低下や離職リスクも無視できない状況でした。
そんな中、システム導入を決意され弊社に依頼がきました。

導入ソリューションの概要

在庫処理にはさまざまに課題があります。
A社では引当の数量入力ミス、引当先の製品違い、二重引当が大きな課題となっていました。
これらの課題を根本から断ち切るために提案したのが 「ドラッグ&ドロップ式在庫引当ボード」 です。
FileMakerのWebViewerの機能を使用した基本機能では実現が難しいUIを開発し、視覚的かつ直感的な操作を実現しました。
PC が苦手なベテランスタッフでもタブレット感覚で使えるよう、「クリック」と「ドラッグ」のみに操作を限定しています。
これにより、数量入力を減らして人為的ミスを減らすことができます。
また、FileMaker標準機能の悲観的排他制御により他の人が触っているデータの変更ができなくなるため、二重引当を防ぐことが可能です。
引当する際にも、引当が可能な製品であるかを確認する処理を入れることで、引当違いをなくすことができます。

お客様からの要望

社員の皆さんはあまりPCに強くなく、システム導入への大きな懸念点となっていました。
そのため、だれでも触れるようなわかりやすいUIでの開発、操作は必須でした。
また、間違いの要因になりやすい数字入力などをできるだけ避けて、クリックのみで使用できるというのを望まれていました。

提案

チェックボックスの選択(受注と在庫)とドラッグ&ドロップで操作可能なUIを提案させていただきました。
スマホのように操作できることをプロトタイプで実際に確認いただき、「ドラッグ&ドロップ式 在庫引当ボード」での実装となりました。

実装プロセス

要望定義(1週間)

実際の業務を要望定義しつつ、お客様の希望通りの動きになるようにプロトタイプを開発。
そして、プロトタイプを実際に操作していただき、どのような操作感なのか、必要な機能は揃っているかを確認いただきました。
実際のプロトタイプは以下の動画になります。

要件定義(4週間)

ここでは在庫管理に必要な機能をすべて確認しつつ、出来上がるシステムのイメージをお客様と私たちエンジニアとで揃えていきます。
今回はアジャイル開発という方式の開発でしたので、1機能ずつ毎週定例会議で確認しながら開発を進めていきます。
この時に実際の画面や簡単な動きを確認できるというのは、FileMakerの良い部分です。
アジャイル開発において確実な生産性を提供してくれます。

開発(6週間)

ここからは打ち合わせの頻度を隔週に変更します。
開発が進み、機能がある程度形になってきた段階で、機能ごとに確認していきます。
 「イメージ通りに実現できているか」
 「想定していた通りに進んでいるか」
 「当初決定した要件が正しく反映されているか」
こうした点を、1つひとつ丁寧に確認していただく機会を設けています。
このフェーズで、お客様から新たな要望が出てくることも少なくありません。
しかし、そうした追加要望に都度対応していると、プロジェクト全体の進行が滞ってしまう恐れがあります。
まずは当初合意した基本機能の開発を優先し、しっかりと完了させることを重視しています。
その上で、基本機能がすべて実装された後に、追加の要望について改めて優先度を整理しながら検討・対応していく方針をとっています。

エラーハンドリング強化(1週間)

同時衝突対策、すなわち在庫の同時操作に関するリスクについては、改めて検証を行い、想定される競合パターンへの対応を強化します。
特に、在庫数を超過してしまうような操作が発生した場合への対応が重要です。
UI上で即座に異常を検知し、該当箇所を赤枠でハイライト表示するなど、ユーザーが視覚的に問題を把握できる仕組みを取り入れます。
これにより、ルール違反となるデータの混入を未然に防止し、運用面での安全性を高めます。
さらに、エラー処理の強化だけでなく、処理そのもののスピードや安定性の向上にも注力していきます。
システム全体の応答性を改善することで、利用者にとってストレスのない操作体験を実現し、実務の中で確実かつ効率的に運用できる環境を整備していきます。

ユーザー教育(2時間+1週間)

実際に現場でシステムをご利用いただく前には、開発した機能や操作方法について、ユーザーの皆さまにしっかりとご理解いただけるよう、事前に使用方法の説明を行います。
操作の流れや注意点、具体的な運用手順などについて、実際の画面を見ながらわかりやすくご案内することで、スムーズな立ち上げが可能となるようサポートいたします。
また、必要に応じて操作マニュアルや運用ルールをまとめた資料を作成し、配布いたします。
こうしたドキュメントは、初めて操作する方や引き継ぎ時にも役立つ内容となっており、日常的な利用における不明点の解消やトラブル防止にもつながります。
導入後の定着を見据えた準備を丁寧に行うことで、現場へのスムーズな浸透を図っていきます。

運用

すべての開発工程が完了すると、いよいよ実際の現場でシステムを本格的に運用していただくフェーズへと移ります。
このステップでは、実際の業務の中でシステムがどのように活用され、効果を発揮していくのかが試される重要なタイミングでもあります。
運用が始まると、当初は想定していなかった細かな改善点や新たな要望、さらには「こうなったらもっと便利になるのでは」というような願望が現場から寄せられることも多くあります。
そうしたフィードバックは、今後の改修や機能追加のヒントとなり、より実用的で使いやすいシステムへと進化させていく上で非常に貴重な情報です。
また、システムというものは「開発して終わり」ではなく、実際に使用される中で徐々に使い方が洗練されていったり、業務や環境の変化、さらには時代の流れに合わせてアップデートされていく必要があります。
そのため、運用後の保守・サポートというフェーズも非常に重要な役割を担っています。
トラブルへの迅速な対応はもちろんのこと、改善提案や環境変化への柔軟な対応などを通じて、長く安心してご利用いただけるよう継続的に支えていくことが、私たちの大切な使命だと考えています。

効果測定:導入前後の数値変化

システムを導入してから1年が経過し、現場での運用が馴染んできたタイミングで、改めて導入効果や実際の使用状況を把握するため、A社のご協力のもとアンケート調査を実施させていただきました。
このアンケートでは、システムが日々の業務の中でどのように活用されているのか、導入前と比べてどのような変化や効果があったのか、また運用を通じて見えてきた課題や今後のご要望などについてもお伺いしています。
現場のリアルな声を通じて、実際に役立っているポイントや想定外の活用方法などが明らかになり、今後の改善や他社導入への参考にもつながる貴重なフィードバックを得ることができました。

効果測定:導入前後の数値変化

まとめ

今回ご紹介した導入事例、いかがでしたでしょうか。
FileMakerでは実現が難しいと思われていた高度なUI操作も、工夫と技術の積み重ねにより形にすることができ、実際の業務改善にしっかりとつながったことは、私たちにとっても非常に嬉しく、大きな手応えを感じているポイントです。
中でも在庫管理のように、リアルタイム性や同時操作への対応、視認性の高いインターフェースなど、FileMakerの標準機能だけではカバーしきれない課題に対して、どのように応えていけるかは常に試行錯誤の連続です。
今回の事例は、その一つの解決策として今後の参考にもなると考えています。
今後もこうした技術的なチャレンジを重ねながら、業種や規模を問わず、多くの企業様の業務に貢献できるシステムを開発・提供していけるよう、私たち自身も進化を続けてまいります。引き続きどうぞご期待ください。

また、株式会社ブリエでは、FileMakerを活用したシステム開発や運用支援を行っています。
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執筆者:諏訪田 隆星

多岐にわたる業種での経験を経て、現在はFileMakerを中心に活躍中のエンジニアです。ローコード開発を得意としながらも、Django、React、Flutterなどの技術にも挑戦し、幅広い開発スキルを習得。常に自分の技術を磨き、より良いソリューションを提供できるよう、継続的にスキルアップを図っています。多彩な技術を駆使して、クライアントのニーズに応える柔軟性と、迅速かつ効果的な開発力が強みです。

【全国対応】株式会社ブリエは、企業の経営課題であるDX化、業務効率化、ペーパーレス化、情報の一元管理など、ビジネスニーズの変化に合わせてFileMakerで業務システムを開発し、柔軟に拡張して解決します。あらゆる業種や規模の企業、非営利団体、学校に固有の課題を解決するカスタムAppをご提案します。

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